誰もが傷を持って生まれてくる。

ひとは生まれてくるときにへその緒を切り落とされる。
これが人生で最初につく傷だ。

本来、全能であった存在から、ひととしての経験を重ねるごとにその神性は失われて我々はただの人間となる。

よく子供は7歳までは神のうちだと言われる。
善も悪もない、荒ぶる神だ。

親は時としてその荒ぶる神に、ひどく絶望してしまう。
我が子なのに心が通じないと。

だが忘れないで欲しい。神は幸せをもたらす奇魂でもあることを。


この物語もまた、傷をもった人たちが登場する。
お互いの二面性を持ち寄り、支え合い、共に歩もうと決意する。

他人の心へはどれだけ踏み込むことが許されるのか。
同情は果たして正しいのだろうか。
心のなかの神〈子供〉を我々は鎮めることができるのか。

作者による生々しい筆致で、現代社会の一部を切り取った人間ドラマ。
読みすすめるたびにこちらもただでは済まされなくなる。

覚悟をもってのぞんで欲しい。
物語にはそういうちからがある。

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