読後、与えられる安心感、というものがある。
それは、はっちゃけたキャラクター性やぶっとんだ展開、ともすれば問題作、としか褒めようがない作品からは得られないものだったりする。
勿論、世の問題作に非などなく、それにそれで価値はあり、費やした時間と金額に応じた感想をのみ、天秤に掛けるだけの、ただそれだけの娯楽である。
等価である、ということの。
明確でありながら、なかなかに残酷な平等さは、時として言語や文化、或いは世界という背景の価値を異にした場合に容易に摩擦と軋轢を生む。
天秤の針が振れずとも、石と金とでは、ただ重さが同じだけである。
小難しい言い方をした悪癖を許して欲しいが。
何が言いたいかというと、『七臥よろづ古物店』——作者 サカシキタスク ——は、今、作品に触れるより先に、私のレビューを見たあなたに、「時間を差し出すに足る作品」であることを、対価を等価であると。
店主である男、七臥の、一癖も二癖もある飄々たる佇まいに、時折見える人情味。また、理を違えた異なるモノたちへの、容赦なき太刀の振る舞いもまた、鮮烈な個性の魅力と見る。
古物には、付喪なる神が憑くという。
七臥 津雲(つくも)とは、何とも痛快なネーミングではないか。
世界を繋ぐ、特異点である古物店。
その扱う品々にも、ストーリーに絡ませる美術品の如き細工を施してあるのも心憎い。
目新しさ、という点では、訴求性に欠ける作品かもしれないが。
或いは、ジャンルに、もしくは作者に、そういった形でファンになる読者にとって、まず安心して読める類の作風でもあろう。