この物語は、相手に気持ちを正しく伝えることの重要性を叩きつけてくる。
何せ、言葉を発した側と受け取った側、双方が十年という歳月を悶々として過ごすことになったのだ。結果を見れば、良い意味で「会えない時間」となったから、有益な十年だったのだけど。
ジャスミンとジャック、正直なところ精神力が子どもとは思えないほど強靱だ。
十年間も相手に嫌われていると思いつつも愛情を拗らせた。通常ならば、形式的なパートナーになるまでは良しとしても、自分を嫌っている相手をパートナーになど望まないだろう。
一度の告白でさえフラれることを恐れて躊躇うようでは、この二人のようには努力できないだろう。
だが、この二人は違う。嫌われている相手を好きにさせてみせると十年も努力するのだ。並大抵のことではない。
作者さんは、この並大抵ではない精神力の持ち主二人を愛らしく描いている。
終盤に近づくと、「いい加減にしろよ」と言いたくなるほどウブでじれったい二人に描いている。
展開もテンポ良いから、二十五万字もある作品だとは読後感じない。
二人の周辺の登場人物たちも個性派揃いだから、二人に起きるトラブルの一つ一つを楽しめる。
最後まで読み切る間に、「いい加減にしろよ!」と叫ぶ回数が十回を越える読者さんは私の同士だ!
そう言いたくなるほどのじれったい二人を温かく見守って、そしておおいに楽しんでいただきたい。
信仰。
この世でもっとも厄介な価値観のひとつ。
本作は最悪の出会いから始まるラブコメの王道を踏襲しつつも、国家的な価値観の対立を描いたポリティカルフィクションでもある。
タイトルにもあるような政略結婚や権力の腐敗、そして跡目争いなど骨肉を食らい合う相克の関係性が随所に見てとれる。
それらはキャラクター造形にも活かされており、読めば読むほどに物語の深淵に驚かされるばかりである。
またヒロインが主として輿入れする館に巻き起こる一大BLブームや、それに敵対する百合至上主義との対立も必見である。
シリアスばかりではないバランス感覚に、著者のセンスを感じるられることだろう。
変なひとこと紹介文も出ちゃう。(真顔)
いやほんと、今回のカクヨムコンで一番の「ニヨニヨ悶絶たまらん作品」として僕は推すねとキメ顔で言うくらい、両片思いの破壊力が半端ない作品。
おまえらー、おまえらーと、読んでて応援したくなることうけあいです。
幼い頃の顔合わせから、嫌われていると思い込んでる主人公ジャスミン。
そんな彼女を、幼い頃から「だいしゅき、けっこんしよう」(砂糖を口から吐きながら書いた)な王子ジャック。
そんな二人が政略結婚するとなってさぁ大変――になるのかと思ったら、なるんだなあこれが。超絶にかみ合わない両片思いぶり。
ジャスミンはなんとかしてジャックを振り返らせようとして空回り。
ジャックはジャスミンを大切に思うばかりに空回り。
そこにちょっと意地悪な現王にしてジャックの父、個性豊かなメイドたち、謎めいた庭師たち、そしてちょっと訳ありな従兄弟のマクシミリアンが加わってしっちゃかめっちゃか。
もうやりとりを見ているだけで十分楽しい。
そんなコメディなやりとりとは裏腹、ストーリーはとても怪しくシリアス。
次代の王の座を巡って静かな暗闘が繰り広げられます。
いったい誰が敵なのか、どういう目的なのか。
ジャックやジャスミンたちを試すように策謀が渦巻く。
そして、それはついにジャスミンの身近な者にも迫り――。
はたしてそんな状況だというのに「少女漫画みたいなこと思っている場合かァーっ!!」と言ってやりたくなるくらいになんかシリアスとラブコメが襲い来る本作品。
恋愛カテゴリということで、男が読むのはちょっととか思っているそこの貴方。
これはあれです、男が読んでも充分楽しい感じの作品ですぞー。
文句なしでおすすめでございます。
この物語には、大河のような趣がある。
読者は観客となって、プレイヤーたる主人公達が、盤面でどう動くのかを楽しむことになる。
しかしその盤面には、とても大きな計略が仕組まれており、まるで運命のように彼ら彼女らを翻弄するのだ。
たとえば棋士は、対局のとき、何十手先をも読み切り駒を動かす。
けれど、それが想定外の一手で、完全にご破算になって立て直しを迫られたりもする。
結果、思いがけない活路を見いだすこともある。
これを運命に抗うといえば、それだけの話だが。
ここに人間模様が複雑に絡んでくれば、ひどく愉快な劇となる。
運命という盤上で、相手のことを手中に収めんと奔走し、ついには奇跡のような一手を引き当てるさまは、ただしく大河ドラマの一ページだろう。
連綿と続く流れが、どこに行き着くのか。
この物語の決着がどんな形になるのか。
それをおおいに楽しみとして、この星の数とする。
アナタも是非、このゲームをご観覧あれ。
きっと、贔屓したいプレイヤーが見つかるはずだ。
幼い頃に婚約者であるジャックに泣かされたジャスミン。そんなジャックと恋に落ちてやると、ジャスミンはひたすら女に磨きをかけて、ジャックの国であるヴォルト王国に嫁いでくる。
一方、ジャックもジャスミンにメロメロ。けれど、幼い頃の出会いがトラウマになっている二人は、なかなか距離を縮めることが出来ない。
その上、お互いに今すぐ結婚したいと思う二人のあいだには、陰謀やジャックの父、コーネリアスの思惑も渦巻いて一筋縄ではいかない。
二人は、無事にお互いの気持ちに気がつき、結婚することが出来るのか!
ジャックとヒロインであるジャスミンのやりとりに焦れ焦れ、ニマニマできる作品です! それだけでなく、宮廷の細かい描写や、本作に登場する国家や宗教、医療との関係性もよく考えられて書かれていると思いました。
「どうして、お前たちは素直に物事を考えることができんのだ! すぱっと本音をぶつければ、それで済むだろう。馬鹿者と」
と思わせることこそ、ラブコメの王道。イライラは、それだけ本編にのめり込んでいることの証しであり、褒め言葉。
ジャスミン・ハルは、王太子、ジャック・フィン=ヴァルトンの妃となるべく、ヴァルト王国に招かれた。気合も十分、想いも十分なのに、なぜか物事はかみ合わず、落ち込む日々。実のところ、ジャックもそれは同じで……。
互いのことを思い合う恋人たちの(?)の描写が、実に鮮やかで、読み手を引きつける。情景描写も巧みで、それが恋人たちの置かれた状況を引き立てる。
レビューを書いている時点では、物語は序盤であるが、恋人たちの背後に渦巻く暗い影も見えはじめていて、この先の展開が楽しみ。
二人の揺れ動く想いにイライラさせられながら、物語を楽しんでいきたい。