逢えない時間が愛を拗らせるんです

 この物語は、相手に気持ちを正しく伝えることの重要性を叩きつけてくる。

 何せ、言葉を発した側と受け取った側、双方が十年という歳月を悶々として過ごすことになったのだ。結果を見れば、良い意味で「会えない時間」となったから、有益な十年だったのだけど。

 ジャスミンとジャック、正直なところ精神力が子どもとは思えないほど強靱だ。

 十年間も相手に嫌われていると思いつつも愛情を拗らせた。通常ならば、形式的なパートナーになるまでは良しとしても、自分を嫌っている相手をパートナーになど望まないだろう。

 一度の告白でさえフラれることを恐れて躊躇うようでは、この二人のようには努力できないだろう。

 だが、この二人は違う。嫌われている相手を好きにさせてみせると十年も努力するのだ。並大抵のことではない。

 作者さんは、この並大抵ではない精神力の持ち主二人を愛らしく描いている。
 終盤に近づくと、「いい加減にしろよ」と言いたくなるほどウブでじれったい二人に描いている。
 展開もテンポ良いから、二十五万字もある作品だとは読後感じない。

 
 二人の周辺の登場人物たちも個性派揃いだから、二人に起きるトラブルの一つ一つを楽しめる。

 最後まで読み切る間に、「いい加減にしろよ!」と叫ぶ回数が十回を越える読者さんは私の同士だ!

 そう言いたくなるほどのじれったい二人を温かく見守って、そしておおいに楽しんでいただきたい。
 

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