概要
大陸間戦争の終結、そして大竜公国(グロースドラッフェンラント)の滅亡から五年……。
支配者を失ったアードラー大陸は、いまなお戦後の混乱と無秩序の只中にあった。
かつて存在した電信網や鉄道は寸断され、遠く離れた人と人の思いを繋ぐ術は失われようとしていた。
陸と海に厳格な国境線が画定されていくなかで、空にはまだひとかけらの自由が残っていた時代。
海に面した小国・マドリガーレに、ちぎれた世界を結ぶ風変わりな会社が存在した。
「サラマンドラ航空郵便社」。
戦乱が産み落とした世界最強の戦闘機・サラマンドラを操り、飛行士ユーリは今日も空を翔ける。
けっして届かないと諦めかけていた人の思いを届けるために。
この空が続くかぎり、世界の果てまでも――――。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!最高のドッグファイトを、最高の筆致で観戦できる幸せを是非!!!
機密保持のため終戦時に処分された伝説の無敗機――、もうこれだけでも胸が熱くなるような設定なのに、無理難題に近い依頼を平然とこなしていく主人公の静謐な格好良さがたまりません。連作なので一つ一つはそれほど長くありませんが、その分ぎゅっと濃縮された読み応えがあります。
各エピソードには激しいドッグファイトや、哀しさがあふれる幻想的な光景や、男と男の矜持のぶつかり合いや――とにかく航空浪漫たっぷり。また、それぞれの場面でまるでコックピットに居るような臨場感が。そして、機体の描写が胸が痛くなるほど美しい。
谷甲州氏の航空宇宙軍史を初めて読んだときの感覚に似ています。興奮、大興奮です!!! - ★★ Very Good!!最高のスカイ・ファンタジー!!
飛行機モノを探して辿り着きましたが、見つけられてラッキーでした!
キャラのさりげない行動描写やメカニック描写に体感を感じられる作品です。
機械の構造とかをある程度、把握していないと描けないと思いました。
こういった書き方が好みなのでよけいにハマってしまいました!!
動力のある機械系が好きな(フェチな)方にはオススメです!
セリフやキャラのちょっとした思考描写も効いてます。
世界観の説明も程よい具合に書かれていて飽きがきません。
物語のメリハリとか、いろいろ見習いたいです!
ジャンルはSFですが、シャレで敢えて“Sky Fantasy”での“SF”にさせてください! - ★★★ Excellent!!!主人公はクールに、戦闘機は熱く読者を物語へ惹き込む
人機一体。
機械を手足のように操るための理想。
この物語で随所に感じられる理想です。その理想を感じる箇所の描写では、作者さんの想いが、研究者にとっての研究対象へのように伝わってきた。
その想いが最も強く伝わってきたのがプロローグ。
この作品を読む資格を問うかのように、戦闘機サラマンドラの空中での行動描写(この箇所では戦闘描写とは書きたくない)が、プロローグでは最終場面までほぼ登場しない主人公の技量とキャラクターを読者へ叩き込んでくる。
「この描写に付いて来れますか?」
そう問われ続けるようなプロローグ。熱い、熱いんです。
このプロローグで戦闘機サラマンドラと主人公の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!メカと人が紡ぎ出す、珠玉のドラマ
我々のものによく似たどこかの世界、熾烈な戦争をくぐり抜けた大陸の片隅で。
いまだ戦雲の名残漂う空に、かつて最強を謳われた幻の重戦闘機が羽ばたく――
何とも男の子の心をくすぐる基本設定で、物語は幕を開ける。語られるほどの伝説もない、消耗されていく低コスト機に身を預けて空を駆ける一パイロットの、憧憬と羨望に満ちたまなざし、されど握りしめて手放せない矜持を通して、傑作機サラマンドラのシルエットが、力強く美しく描かれる。
これだけでもすでに、ご飯がお腹いっぱい三食分は食べられる美味しさなのだが、さらに、さらに。
敗れ滅んだ国家が残した物言わぬ鉄の機体は、それを操るパイロットと保守管理…続きを読む - ★★★ Excellent!!!エンジンの音が聞こえてくる
パッと読んだ感じ。割と用語的には硬派で、とっつきにくい印象があるかもしれません。正直な話をすれば、最後まで読み切った僕も細かな用語について正確に理解できたかと言われると。多少自信が無いのですが。
けれど、その上でこの物語にはロマンがあります。
架空の欧州大戦が終わった1950年代、かつての戦争で無敵の伝説を誇り、いまなお最強の呼び声高い重戦闘機CaZ-170”サラマンドラ”の物語。
ええ、これだけで伝わるはずです。大体ロボットアニメを鑑賞できる知識があれば大丈夫。この物語を最後まで読み終えればあなたにも、アルモドバル二十四気筒X型液冷発動機エンジンの鼓動が聞こえて来る筈です。
- ★★★ Excellent!!!サラマンドラ、サラマンドラ、火の中の竜
いくつかの連作で綴られる、元・戦闘機と元・戦闘機乗りの物語。
非合法な「配達屋」として飛ぶ「彼等」、其処に巡り合う人々の思い。
今日も、翼を持った美しい火竜は、「たいせつなもの」を運び続ける。
とある国の、とある戦争の「戦後」から始まり、戦争の中で取りこぼしたもの、置き去りにしたもの、残されたものを運び続ける「火竜」の翼。
その火竜もまた、やがて至らねばならない「本当の終わり」のために、自らを運ぶ。
閉じた記憶を遡るような仕立てが、ときに美しく、ときに泥くさく、叙事的にして叙情的、静息にして苛烈な物語を形作り、ページを繰らせていく。
架空でありながら、其処には確かにひとつの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!空戦無敗の伝説の戦闘機が、郵便配達のため空を翔ける!
大竜公国の敗戦での戦争終結後。
現在は一機も残っていないとされる、
大竜公国の伝説の戦闘機の姿が目撃される。
そして、とある国に、どこにでも荷物を届けるという、
モグリの航空郵便社が存在した。
連作短篇です。
いくつかの依頼を果たすうち、
伝説の戦闘機の飛行士は何者か、
なぜ航空郵便を始めることになったか、
読者の前に次第に明らかになります。
何でそんな凄い戦闘機で郵便を!? と
最初はすごく驚きましたが。
「どこにでも」ということは、
警備されてて普通入れないところにも
敵機の追跡を撒いて届けないといけないわけで。
こちらから積極的に攻撃しないにせよ、
逃げ切れるだけのスペックは必要な…続きを読む