”ここ”とは違う世界の1950年。
大陸間戦争の終結、そして大竜公国(グロースドラッフェンラント)の滅亡から五年……。
支配者を失ったアードラー大陸は、いまなお戦後の混乱と無秩序の只中にあった。
かつて存在した電信網や鉄道は寸断され、遠く離れた人と人の思いを繋ぐ術は失われようとしていた。
陸と海に厳格な国境線が画定されていくなかで、空にはまだひとかけらの自由が残っていた時代。
海に面した小国・マドリガーレに、ちぎれた世界を結ぶ風変わりな会社が存在した。
「サラマンドラ航空郵便社」。
戦乱が産み落とした世界最強の戦闘機・サラマンドラを操り、飛行士ユーリは今日も空を翔ける。
けっして届かないと諦めかけていた人の思いを届けるために。
この空が続くかぎり、世界の果てまでも――――。
に更新