始まりの一瞬だけ、強い違和感に視界が眩んだ
なんともすわりが悪い、居心地の悪い雰囲気とでも言えばいいだろうか
ともかく、その正体を確かめたくて先を読む
手口は巧妙だ
読み進めるほど、知識がある人間ほど絡め取られる
逆に何も知らなければ、想像力に怯えることになる
どちらにしろ致命的だ
巨大な何かの姿が頭の中に描写されたときには、もう取り返しはつかないだろう
けれど、私が決定的に恐れをなしたのは終盤のことだ
まさか、まさかジャパニーズクトゥルフにおいて淡島信仰を持ち出す人間がいるなどとは考えなかった
いや、考えたくなかった
そこからはもうダメだった、私は狂気の虜だった
そうして読み終わり、このレビューをしたためている
これは次代に対する福音だろうか?
暗黒神話というものを知らない誰かが目にしたとき、恐怖の処女を奪われるにたる傑作だろう
それは間違いない
しかも、あまりに悍ましいときている
最後までとは言わない
とかく、半ばまで読んでほしい
そうすれば──たぶん、あなたも引き返せないだろうから