舞台は砂漠。砂竜と呼ばれる竜が存在する王国の物語。隻眼の女傑ナージファに育てられた少女アイシャは、従弟のファイサルと共に集落で平穏な生活を送っていた。しかし、二人が外出した間に集落は何者かの襲撃を受け、帰還した時には灰燼と化していた。
故郷と庇護者を失い途方に暮れるアイシャ達だったが、他の氏族の招きに応じて新たな生活を開始する。やがて成長した二人は故郷を復興するために巡礼の旅に出るが、それが思いもよらぬ運命を紡いでいく。
この作者様の作品はどれもそうですが、とにかく情景描写が秀逸。本作も砂漠の情景やそこに住まう人々の生活ぶりが克明に描かれていて、あたかも砂の大地が眼前に広がっているような気分を味わえます。昼間の熱砂も月夜の静けさも、まるで自分がその場にいるかのように感じることができるでしょう。
ストーリーはシリアスよりであるものの、キャラクターがコミカル寄りなので重くなりすぎません。特に砂竜のアジュルが可愛らしく、アイシャとのいい意味で緊張感のないやり取りが物語を中和してくれます。
基本的には平和に進む物語ですが、終盤で衝撃の展開を迎えてからは一気にシリアス度が増していきます。黒い瘴気が漂う中で死の気配を帯びてゆく世界。滅びを止める鍵となるのは水と、母から託された腕輪。これらがどう繋がるかはぜひお読みになってみてください。
少女と少年、そして一匹の竜。彼らが紡ぐ絆の物語を、ぜひ堪能してください。
不器用で臆病なアイシャが可愛くて一生懸命で、ナージファママの不器用な愛をちゃんと受け取りながら大きくなったのがよくわかる素敵なお話です。ちゃんと愛されて育ったからアイシャは優しいし、アジュルにも愛を掛けてあげられるんですよね!そんなアイシャの周りにいる人たちも、なんだか居心地が良さそう。天竜やいろんな事情から、母と娘は悲しい結末になっちゃったけど、でもそれだけじゃない希望があるラストが良かったです!(´;ω;`)本編は終わっちゃったけど、後日談の講師もあるのでまだまだ浸れることが楽しみです!文章上手いしどのキャラもめちゃくちゃ魅力的で、アイシャもファイサルもナージファさんももちろんワシム君もみんな大好きです…!読んで損はありません!
砂漠の国と砂竜のお話です。
主人公は臆病で少し不器用な女の子。
運命に導かれるように赤き砂竜使いナージファの養女となったアイシャ。
平本りこさまの魅力は何と言っても繊細で美しい描写です!
砂漠の幻想的な風景がまるで見てきたかのように浮かび上がります。
臆病なアイシャの心の成長に思わず「がんばって~」と声援を送りたくなります。
砂竜の謎、駱駝と氏族をめぐる旅。
クスッと笑える幼竜に
謎の噛み噛みトビネズミさん(気になる方はどうぞ♪)にほっこりします。
わたしは特に主人公のアイシャと従弟ファイサルの掛け合いが
カワ(・∀・)イイ!! と思いました。年齢とともに少しずつ二人は
大人になっていく……。いや、まだないかな?
アイシャたちの旅は、決して平坦な道ではありません
でもワクワクして夢中になります。おススメします!
目線を上に。
紫紺の空に浮かぶ巨大な月。
乳白色の微光を発する星の紗。
目線を下に。
橙色の砂丘の谷間、黒い天幕の群れ、赤い手綱の駱駝と赤銀色の砂竜の一郡。
文章が! 美しすぎる! しかも、最初から最後まで、ずっとこのクオリティなんですよ。
話も、とても面白い。謎を追いかけ、最後、きちんと物語は収束します。
主人公の少女はどんくさく、怖がりです。でも、私は、そんな主人公も大好きです。怯える小動物の如く、彼女の観察眼は鋭いのです。そして、感情の機微がみずみずしく描かれます。
とても素敵な物語に出会えました。
是非皆さまも、砂漠の金砂が散る熱風に吹かれに、この物語の世界に足を踏み入れて下さい。
砂漠の帝国の第十六皇女として生まれ、窮屈に生きていくはずだったアイシャは、誇り高き赤の氏族の族長、女傑ナージファの養女となり、砂漠の民の一員となります。
血のつながらぬ、しかし紛うこと無く母娘としての絆をナージファと育んだアイシャ。臆病ながら誇り高き赤の氏族として育った彼女はある日従兄弟と集落を抜け出し……そして大きく運命が動き出すのでした。
鮮やかな砂漠の光景と息遣いを感じるような各氏族の描写。精神は水となり、肉体は砂に帰るという輪廻思想。そして、本当に死すれば砂に帰るという、砂竜と……全ての竜の母たる天竜という存在。滅んでしまった故郷と、その真相。
異国情緒たっぷりで、ともすれば重厚になるテーマのこの作品ですが、生き生きとした掛け合いがとても豊かであるため、何度くすっとさせられたことでしょう。
少し臆病で引っ込み思案なアイシャ。それでも決意して一歩一歩前に進んでいくさまは、たしかに彼女が誇り高き赤の竜使いなのだと応援したくなる、そんな物語です。
先日本編が完結したこの作品ですが、嬉しいことにまだまだ続きの後日談が綴られる様子。今こそ一気読みするチャンスかもしれません。
(「魅せる世界観×応援したくなる女の子」4選/文=渡来みずね)
敬愛する母様と運命的な出会いを果たし、大切に育てられた臆病なアイシャちゃんが、母様の遺した想いと砂竜+従弟とともに氏族のもとを巡り、策略と闘いながら成長し、真実に近づいてゆく――砂漠を舞台にした成長譚であります。
本編に関しましては皆様のレビューが素晴らしいので、自分は過去編について触れさせていただきます。
\アイシャちゃんかわいい!/
本編は三人称でありつつ、アイシャちゃんの後ろを追っていくような視点で語られているのですが、過去編は母様ことナージファさんが四苦八苦しながら、周りの人々に助けてもらいながら、不器用でもアイシャちゃんをまっすぐ育てていこうとする姿が見られて、いっそう本編のほうの謎が解き明かされるのが楽しみになります。
従弟のファイサルとの出会いと、ふたりのパワーバランス、お互いにまだまだおこちゃまねふふふ、という微笑ましい過去編エピソード〝も〟好きです。
瑞々しい文章で描かれる、砂漠の国を舞台にした少女の成長物語です。
あらすじにもあるように、主人公アイシャ元々皇女。とある出来事から砂竜使い赤の一族の族長、ナージファの養女となります。
女傑と言われるナージファの娘になったとはいえ、アイシャは奥ゆかしい性格で臆病です。従弟のファイサルには「どんくさい」と称され、初めは羊にすら怖がる始末。
そんなアイシャとファイサルは、砂竜の卵を孵す「竜生の儀」を見てみたいと、こっそり集落を抜け出し……遭難してしまいます。
なんとか同じ一族に保護された二人。
翌日自分たちの集落に帰った二人が見たものは、変わり果てた故郷の姿でした。
まだ子どもだった二人は、赤の一族の生き残りとして生きていくことになってしまいます。
こちらの物語は、皆様おっしゃっているように情景描写が秀逸。
行ったこともない砂漠の国の様子や、そこに住む人々の息遣い、また想像上の生き物である砂竜もまるで目に浮かぶかのように描かれています。
また、主人公のアイシャもファイサルも、煌びやかな容姿や能力がある訳ではない普通の少年少女です。
そんな二人が旅をしながらお互いを支え合い(喧嘩もするけれど)他の大人たちの助けを借りながら運命に立ち向かっていく姿は、ファンタジーでありながらどこまでも現実的。
きっと彼らの姿に共感し、応援したくなってしまうでしょう。
しかし、時々起こる不思議な出来事。徐々に明らかになるあの日の真実や砂竜の秘密などは、ファンタジー要素ががっつり感じられて、世界観を存分に楽しむことができます!
後に出てくる砂竜の子ども、アジュルの仕草にも癒されます。(とっても可愛いです)
普通のファンタジーでは物足りない方、確かな文章力でどっぷり世界観に浸りたい方、旅物語が好きな方、少女の成長物語が好きな方。
様々な方におすすめできる作品です!
臆病で鈍臭い皇女アイシャは砂漠に住む赤の種族の養女となります。男勝りの義母ナージファと食いしん坊でやんちゃな従弟ファイサルに守られる穏やかな日々は、ある出来事を境に激変するのでした。
運命に導かれるように、そして抗うように、アイシャとファイサルは赤の種族の再興を夢見て立ち上がるのです。
竜とか、砂漠とか、そんなワードが並んだら、否が応でもシリアスで重厚な設定とか、美しいお姫様とかめっちゃ格好いいヒーローとか思い浮かべてしまうのですが、アイシャとファイサルは見た目もキャラも繰り出す行動もみーんな冴えない。シリアスな場面も何となくすくっと笑えるシーンに変わってしまいます。
でも、物語そのものは奥深く、悲しみや憎しみが隠れていたり、自然と人の関係性を考えさせられたりします。そういったものに、不器用な勇気でアイシャが奮闘していく様は胸を打たれました。
この世界を描けるのは、一重に作者の筆力です。繊細な描写があるから、コミカルなシーンも軽くなりすぎず、ストンと心に落ちてくるのです。行ったことのない砂漠の熱や、水の手触り、竜や駱駝の息遣い。瑞々しい世界の中で繰り広げられる上質なファンタジーが、ここにありました。
是非沢山の人におすすめしたい物語です。
この作品でなぜか一番印象に残っているのが、番外編2で速く走れるように練習をしていた時のアイシャの姿です。
手を抜いて走っている周りの子供たちに混ざり、懸命にその鈍足を披露しているアイシャ。
決して速くない、けれど自分の中では精一杯にやっているその姿が、とても心に残っています。このシーンにアイシャをアイシャたらしめている何かが表現されているからなのかもしれない。
砂竜で駆る誇り高き一族たちが登場する重厚なファンタジーの主人公が臆病者のこの子でいいのか、と読んでいる途中で一度ならず思ってしまった。けれど作品を読み通して振り返ってみると、この作品はまさにアイシャの物語だったと感じました。
主に砂漠を舞台に、のどかな生活が描かれていくかと思えば、急にダークファンタジーのような展開が待ち受けていたりもする。成長と、ナージファとアイシャ、アイシャとアジュルのように、とくに親子の絆の物語であったように思います。
世界が鮮やかに色づいていて、生命の息吹きを感じられる、優しさに溢れたファンタジー作品。そこに確かに世界が存在し、人々の営みが息づいています。
今お読みの、あるいは執筆中の物語についてお尋ねしたい(特にファンタジー)。
その物語に風は吹いているか、と。
主人公は赤き砂竜使いナージファの養女となった十六皇女。彼女が氏族の中で生活し成長し、そして悲劇に見舞われ、それでも立ち上がり歩く。
全容やあらすじに関しては、他の方が素晴らしくレビューで書いてらっしゃるので割愛(ありがたい)。個人的見解で二点の魅力を語りたいと思う。
さて、主人公アイシャ、ぐずい。その上、頑固で面食い、容姿は……まあ可愛らしいのだろうけど、宝石やら、花やら、絹やらに例えられるふうではない(私が読み飛ばしていなければ)。
かような主人公を二十万字オーバー追い続けられるのか。
諸兄は朝ドラのヒロインにイラっとしたことはないだろうか。アイシャは猪突猛進ではなく、その臆病な気質からよくよく考えてくれるのだけれど、どうどう巡りの思考に陥り、ゆえになかなか動かなかったり、落ち込んだりと面倒臭い。しかし、作者はそれを緩和というかより引き込ませる手練をお持ちだ──〝地の文〟である。時折、現れる主人公への鋭いツッコミ。
かような愛の鞭が、ヒロインへの「がんばれ」「そこまでひどくないよ」という愛情や共感に転化するとは、まったく見事な手腕である。某アニメだってキートン山田氏(数年観ておらず今はすでに交代か)のナレーションがなければさぞかしつまらないだろう。
魅力の一点は地の文。これはまあ、テクニックでどうにかなるかもしれない。
もう一つは冒頭でも述べているが、物語から風を感じられるか、である。
もちろん、光だったり、色だったり、音楽だったり、別物でも良い。ともかく、読み始めたら、ここではないどこかへ連れて行かれる感覚。遠くへ、遠くへ、遠くへ──私は幾度となく、今作を読んでいる時、乾いた風を感じ、泉の冷たさに触れ、竜の子の可愛らしい声を聴いた。
こればっかりは小手先の技では真似できない。作者が長い時間をかけて(おそらくねちねち妄想し、調べ、時に頭を抱え)産み出したものだから。
2023年1月22日現在、クライマックスを迎えており、一読者である私は今か今かと次話の公開を待っている。初期からの読者ではないが最新話に追いついたので、リアルタイムで楽しめる特権を得ている。ふふふ。
けれど今から読み始める方もご安心されたし。良い物語はそれ自体に生命力が宿っている。年月を経ても息をしている。ページを開けたなら、いつだって風が吹いてくるのだから。
滑らかで柔らかさを感じる丁寧な文章、物語の中へと没入させる筆力には圧倒させられるものがあります。特に情景描写が美しい。立ったことのない異国の風景が目の前に広がるようです。
人と人との関わりも細やかに描かれており、時には温かさを、時には哀しみを抱かせてくれます。
世界設定も詳細で、パンを焼くなどの日常の描写にも気を配られており、彼らの生活様式を垣間見ることも楽しめます。
穏やかな日常から一変、温かな庇護の元から放り出されるアイシャとファイサル。
まだ頼りない彼女たちは悲嘆に暮れます。それでも赤の砂竜使いの誇りを胸に、前を向いて生きていくのです。
彼女たちを助け、導く年長者たち。孵った赤き砂竜。少女だけが見る不穏な幻影。導かれるようにして踏み出した巡礼の旅は果たして、彼女たちに何をもたらすのか。
ぜひ、異国の地に立ってみてください。
懸命に大切なものを守ろうとする健気な姿に、胸打たれるはずです。
臆病で気の弱い少女アイシャ、いつでもマイペースな従兄弟のファイサル、卵から孵った砂竜のアジュル。三人(二人と一匹)は聖地を目指して広大な砂漠を旅します。
過酷な運命に翻弄され続けるアイシャの旅は、けっして楽しいことばかりではありません。白の氏族、紫の氏族、青の氏族と行く先々で出会う人々、そして起こる事件の数々。アイシャとファイサル、そしてアジュルはそのたびに絆を深めていきます。
三人(二人と一匹)のやり取りはいつでも楽しく、時にはくすっと笑える場面も。また舞台となる砂漠はもちろんのこと、それぞれの集落と聖地の情景描写がとても美しく、何度でも繰り返して読みたくなる文章が心地良いです。
西アジア、アラビアなどを連想させる世界観がお好きな方は多いのではないでしょうか? 細やかで美しい文章を追っていくたびに眼前で砂漠が広がっているような、文章から瞬時に映像へと切り替わるのを感じます。
心理描写も非常に丁寧に描かれていますので、時々主人公のアイシャに感情移入してしまうことも……?辛いときでも大丈夫。アイシャには従兄弟のファイサルがいつでも傍にいます。主人公のアイシャはもちろんのこと、読んでいる私たちもファイサルの元気と前向きさには励まされます。
さて、このレビューを綴っているのは物語の終盤、まもなくすべての真実が明かされる……その目前です。
落ち込んだり悩んだりと弱々しかったアイシャの成長をずっと追ってきました。彼女たちはこの先、新たな困難に立ち向かっていくのですが、ここからの展開にも目が離せません。
新しくストーリーを読み進める方、安心してください。この作品は完結保証されています。ドキドキハラハラのハイファンタジーを一緒に楽しみませんか?
本に出会い夢中だった頃を思い出させてくれました。
カテゴライズも知らなかった子供の頃に時間を忘れて読み耽ったのは「異世界ファンタジー」でした。
アラビア風、なのですがこう言ったこの現実世界のどこかにありそうで、それでいて独自の世界観のある作品は本当に惹きつけられます。子供ならこの広い世界の何処かにある筈だと信じられるような。
砂漠に駱駝、砂竜を連れて巡礼をする……未知の世界を冒険するように。
登場人物、とりわけ主人公達もとても魅力的です。
あどけなさの残るアイシャ、呑気で陽気なファイサル、二人は従兄関係の「家族」ですがお互い憎まれ口を叩きつつも強い信頼関係で結ばれています。そして「アイシャ、ドンクサイ」なんて言葉の移ってしまった幼竜のアジュル。
いつまでも一緒に旅を見守っていきたくなるような一行ですが、物語は冒頭の悲劇的な謎、この世界の根幹とも言える核心に迫っていきます。
旅を通じて絆を深め成長してきた二人と一頭、そして繋がってきた砂竜族達は世界を脅かす事象にどう立ち向かっていくのか……!
読み進めていくごとに目が離せなくなっていくこと、間違いありません。