赤の砂竜使いの誇りを胸に。 残された少女と少年の成長譚!

滑らかで柔らかさを感じる丁寧な文章、物語の中へと没入させる筆力には圧倒させられるものがあります。特に情景描写が美しい。立ったことのない異国の風景が目の前に広がるようです。
人と人との関わりも細やかに描かれており、時には温かさを、時には哀しみを抱かせてくれます。
世界設定も詳細で、パンを焼くなどの日常の描写にも気を配られており、彼らの生活様式を垣間見ることも楽しめます。

穏やかな日常から一変、温かな庇護の元から放り出されるアイシャとファイサル。
まだ頼りない彼女たちは悲嘆に暮れます。それでも赤の砂竜使いの誇りを胸に、前を向いて生きていくのです。
彼女たちを助け、導く年長者たち。孵った赤き砂竜。少女だけが見る不穏な幻影。導かれるようにして踏み出した巡礼の旅は果たして、彼女たちに何をもたらすのか。

ぜひ、異国の地に立ってみてください。
懸命に大切なものを守ろうとする健気な姿に、胸打たれるはずです。

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