冴えない皇女は不器用な勇気で世界を変える

臆病で鈍臭い皇女アイシャは砂漠に住む赤の種族の養女となります。男勝りの義母ナージファと食いしん坊でやんちゃな従弟ファイサルに守られる穏やかな日々は、ある出来事を境に激変するのでした。

運命に導かれるように、そして抗うように、アイシャとファイサルは赤の種族の再興を夢見て立ち上がるのです。

竜とか、砂漠とか、そんなワードが並んだら、否が応でもシリアスで重厚な設定とか、美しいお姫様とかめっちゃ格好いいヒーローとか思い浮かべてしまうのですが、アイシャとファイサルは見た目もキャラも繰り出す行動もみーんな冴えない。シリアスな場面も何となくすくっと笑えるシーンに変わってしまいます。

でも、物語そのものは奥深く、悲しみや憎しみが隠れていたり、自然と人の関係性を考えさせられたりします。そういったものに、不器用な勇気でアイシャが奮闘していく様は胸を打たれました。

この世界を描けるのは、一重に作者の筆力です。繊細な描写があるから、コミカルなシーンも軽くなりすぎず、ストンと心に落ちてくるのです。行ったことのない砂漠の熱や、水の手触り、竜や駱駝の息遣い。瑞々しい世界の中で繰り広げられる上質なファンタジーが、ここにありました。

是非沢山の人におすすめしたい物語です。



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