臆病な少女はやがて、何かを守れる強さを得る。砂竜と共に生きる人々の物語

瑞々しい文章で描かれる、砂漠の国を舞台にした少女の成長物語です。

あらすじにもあるように、主人公アイシャ元々皇女。とある出来事から砂竜使い赤の一族の族長、ナージファの養女となります。
女傑と言われるナージファの娘になったとはいえ、アイシャは奥ゆかしい性格で臆病です。従弟のファイサルには「どんくさい」と称され、初めは羊にすら怖がる始末。

そんなアイシャとファイサルは、砂竜の卵を孵す「竜生の儀」を見てみたいと、こっそり集落を抜け出し……遭難してしまいます。
なんとか同じ一族に保護された二人。
翌日自分たちの集落に帰った二人が見たものは、変わり果てた故郷の姿でした。

まだ子どもだった二人は、赤の一族の生き残りとして生きていくことになってしまいます。


こちらの物語は、皆様おっしゃっているように情景描写が秀逸。
行ったこともない砂漠の国の様子や、そこに住む人々の息遣い、また想像上の生き物である砂竜もまるで目に浮かぶかのように描かれています。

また、主人公のアイシャもファイサルも、煌びやかな容姿や能力がある訳ではない普通の少年少女です。
そんな二人が旅をしながらお互いを支え合い(喧嘩もするけれど)他の大人たちの助けを借りながら運命に立ち向かっていく姿は、ファンタジーでありながらどこまでも現実的。
きっと彼らの姿に共感し、応援したくなってしまうでしょう。

しかし、時々起こる不思議な出来事。徐々に明らかになるあの日の真実や砂竜の秘密などは、ファンタジー要素ががっつり感じられて、世界観を存分に楽しむことができます!
後に出てくる砂竜の子ども、アジュルの仕草にも癒されます。(とっても可愛いです)

普通のファンタジーでは物足りない方、確かな文章力でどっぷり世界観に浸りたい方、旅物語が好きな方、少女の成長物語が好きな方。
様々な方におすすめできる作品です!

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