恋は、遠い日の花火である。

恋は、遠い日の花火ではない――言わずと知れたサントリー・オールドの名コピーである。昔、これに憧れ、いつか情熱大陸に出るんだと豪語していた広告屋の同僚がいた。尻で踏むハヅキルーペのCMが成功(?)を納める今、なまぬるい感慨を抱かずにはいられない。
さて、本作。二部構成になっており、一部は消えた初恋の少女を追い求める復讐劇であり、二部は対照的にひと夏の青春劇となっている。が、〝花火〟を軸に回すと模様が浮かび上がる独楽のような、たくらみが仕掛けてある。
正直なところ感想は難しい(実際、初読の時は逃げた)。恋はやっぱり遠い日の花火で、上から下か見るかで色も形も美しさも違う。多分。心持ちにより変わってしまうのだ。平成の終わりを宣告され、否応なく昭和の終わりを知っている世代が当時を想うのと同じく。けれど振り返らずにはいられない、読み進まざるをえない、そして今もってなおくすぶる。そんな、時代を読まされた物語でした。

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