日常に溶け込む本物と偽物

好きという気持ちは、ただ一方向に進んでいく感情ではない。
対岸に渡る時、遠回りして橋を渡っていってもいいし、最短ルートで川の中を進んでいってもいい。しかし、どちらにしても確実に対岸に到着するとは限らない。
橋は通行止めになっているかもしれない。川の流れが早くて流れされてしまうかもしれない。
安全性も確実性も、好きという気持ちの先には存在しない。

この話には好きという感情に振り回される男が二人、滑稽に見えるが、その実世界の変革よりも強い力で好きを伝える。
二人はやり遂げる。
それで何が起こるのか?
結局たいした事は、何も起こらない。それが生きるという事なのかもしれない。
しかし、確かに二人はやり遂げたのだ。
それだけは、正しい。

その他のおすすめレビュー

斉賀 朗数さんの他のおすすめレビュー39