人を化かす生き物といえば、狐や狸が多いけれど、この作品においては金魚である。しかし化かすと一言でいっても、それが悪意のある行為ばかりとは限らない。彼が恋をしたように彼女もまた恋をして、叶わぬものという思いの内に、静かに姿を消したのかもしれない。でも儚いものというのに惹かれてしまうのも、また性である。意図せぬまま、彼女は罪深い金魚として、ずっと彼に熱を残すのだろう。
京都の美しい情景とともに、甘やかな恋の不思議を楽しんでいただきたい作品です。