反射したアイスの棒は現状

生活の中で感じた、心へのひっかかり。ある出来事を契機にして、それらを思い出すことはままある。
なぜ蘇るのかというのはとても単純で、不満や快楽、羨望などといった心を掻き乱すものに、人間は良くも悪くも魅了されてしまい、それを追い求めるからだろう。

この作品では、蝉の鳴き声を聞いた時でも、手についたアイスを舐めとった時でも、ましてやアイスを齧った時でもなく、自転車に乗ったおじさんに「邪魔だ、どけ!」といわれたのを契機にして主人公は思い出す。
そして、最後に残されるのはアイスの棒。それと、ひとりぼっちの自分。

言葉には一言も現れないけれど、主人公が買った五本入りのアイスや、切符ほどの大きさの切れ端というアイテムから、孤独というものをひどく繊細に心に留めているのでないかと私は感じた。
そう考えてもう一度最初から読んでみると、アイスのように冷えてしまった心と、温かい心でそれを溶かそうとする主人公の葛藤のようなものが見えるような、そんな気がする。

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