炊飯器クッキングを極めんと挑戦を続ける「私」と小関。
テンポのよい料理描写で、なぜチラリと小関を気にしたのか。
小関はこの部屋にいてはいけないのか? という不穏な想像は、
読み進めるうちにきちんと答えが出されていく。なるほど納得。
何てことないレシピを一生懸命に、且つ楽しく追究する。
ただそれだけのストーリーに、さりげなく描かれる2人の関係。
学生のノリが変わりつつある、それは前進なのか分岐なのか。
家電量販店で「私」が見出すのは、一体どんな結末なのか。
著者の作品は児童文学風の『ムギさんと僕』を読んだことがある。
夜毎、銀河鉄道の喫茶車両で手伝いをする男の子の掌編連作だが、
こちらも「美味しい話」がてんこ盛りで、かわいらしくて楽しい。
著者の作風と筆力に心惹かれたなら、ぜひお読みいただきたい。