ブラッドライン

作者 山野ねこ

302

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★★★ Excellent!!!

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まず最初に言っておきますと、私自身はこの作品、すごく好きなんですが、万人にお勧めできるかっていうと微妙なんですよ。だって、都合の良い物語を求めている人は多いですよね? 

信念を持った正義の味方によって、悪い奴がぎゃふんと言わされたり改心させられたりして、救われた人々は幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし――そういうやつです。

いえ、そういうのが駄目って言うつもりはまったくありません。現実世界は都合良くいってくれないことだらけで気が滅入るんですから、虚構でくらい都合良く話が進んでスカッとする世界を楽しみたくもなりますよ(流行りの異世界チートとかはまさにそういう感じですね)。


現実は物語のようにきれいに都合良くいってはくれなくて、テロや戦争の話となれば尚更そうです。どちらが正義でどちらが悪かは見方によって変わり、悪と評される側にも三分の理くらいはあり、正義と評される側にも醜悪な面がある。そして、多くの人々は救われていない。

だから、テロや戦争を扱った物語で御都合主義を排し、リアリティを追求しようとすると、美しい話、スカッとする話にはしづらくなり、読者の心を打つのも難しくなるのではないでしょうか。

そういう意味では、この物語も美しくてスカッとする話ではありません。読み終えて、モヤモヤとする人も多いでしょう。ラストに一抹の救いを見出す人もいれば、なんと救いのない結末だと思う人もいるかもしれません。

イスラム圏でのテロと戦争を扱ったカクヨム作品として、私が他に読んだものでは『撃ち落とされるまで、あと何分?』がありますが、あちらの作品が現実ではそうそう無さそうな美しい展開を入れることによって気持ちの良い結末にしているのとは、好対照と言えるかもしれません。


万人にお勧めできるかは微妙、と私が最初に書いたのは、まあ、そういうわけです。

しかしそれでも、私はこの作品…続きを読む

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★★★ Excellent!!!

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本作は、中東に位置する架空の国家を主な舞台とする、戦争を題材にした作品です。
ふたつの国家が血で血を洗う闘争を繰り広げ、屍山血河によって設けられた国境であるから「ブラッドライン」。
その国境付近で起きたひとつの事件を巡って、世界のさまざまな視点から描かれる群像劇という体を取っています。

しかし、本作を読んで私が感じたのは、「ブラッドライン」は世界のどこにでも存在する――という事。

本作における「ブラッドライン」は、アラルスタン共和国とラザン独立国との血塗られた闘争の歴史を象徴する国境ですが、
その本質は独善、無理解、傲慢、レイシズム、そういった負の感情に由来する心の壁であり、
その壁の向こう側にいる人を攻撃する事に良心の呵責さえ感じない、人間の醜さそのものが本作のテーマであると感じました。

群像劇の形を取っている本作は、1話ごとに語り部となる視点が切り替わりますが、
いずれの語り部もみな、人間の醜い部分が赤裸々に描かれており、そして心の「ブラッドライン」によって誰かと分かたれている。
誰もが、同じ人間であるはずの誰かと、なぜか傷つけあっている。
そしてそれは、日常的に誰かと対立し得る、現実の我々にとっても他人事ではありません。

『憎しみの始まりを 君は知らない それなのに 渡されたそれを 君は次の人へと手渡していく』
虚しく流れるばかりだったのは、全ての人類に向けた、優しさを忘れないでほしいという願いの歌。
現実を生きる我々はこれを、優しさと平和について考える契機にせねばならないのかもしれません。

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★★ Very Good!!

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戦争は愚かだと強烈に訴えてくる作品。何百年も前から幾度となく争い続け、直接被害を受けたわけじゃないのに綿々と受け継がれていく恨み。自国の利益のために紛争に首を突っ込む強国。現地の人を人と思っていない兵士。あまりにも浅慮で短絡的で利己に凝り固まっていて、読んでいて本当にイライラする。
でも同様のことは現実に起きていて、自分が平和な国に身を置く第三者として外から眺めているからこその感想であり、そして間接的に加担していることを見ないふりしているのだと容赦なく突きつけてくる。
ラストのメッセージには感動する。だけど、それだけじゃなくて、自分にできる何かを考えるきっかけにしたい。

★★★ Excellent!!!

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戦争は麻薬。いとも容易く摂取できる、合法的な麻薬です。

僕達は、地球の反対側で昨日何人が虐殺されたかを知る事ができる。
僕達は、それがどういう経緯で起きた争いなのかをニュース番組というフィルター越しに見る事ができる。

戦争でなくとも、例えば大災害だとか、児童殺害だとかでも同じことが言える。
そのニュースを眺めながら、憤り、悲しみ、憂う事ができる。
しかし数分後には、手に持ったトーストが冷めないか、遅刻しないか、と別の方向へ意識を向ける。

こういった話題を議論する事はあれど、誰も本気で止めようなんて思っちゃいない。

だってそれは、僕らの日常の遥か遠くにある出来事だから。
飛び降り自殺をしようとする人がいれば、皆脚を止めて空を見上げる。そして何もせずそれを眺める。

そうやって僕らは傍観し続ける。
だって、戦争は無くならないもの。
もしもニュース番組から戦争や災害や殺人事件の報道が無くなれば、みんな退屈するもの。
正直、仕方ないと思う部分もあります。

遠い異国の戦争よりも、自身の生活を守ることに精一杯になる事を間違いだとは決して思いません。

ただそれを、それこそ麻薬のように率先して閲覧しようという好奇心を理解し辛い、というだけで。


さて、今作の優れているポイントは二つあります。
一つは「Mという謎のアイドルの死」が共通のテーマとなっている事。
国も人種も年齢だってバラバラの彼らだが、クローズアップされたシーンは全て「M」という男への羨望や妬みで構成されている。

Mの死因や殺された理由こそ、予想のつくものではある。しかし、その先にある展開、冒頭から続くオムニバスを結びつける最後の一文が素晴らしく、
「伝えたかったのはM自身のことでは無かったのだ」と気付かされる。

読み手として、知らず知らず「Mについて」の物語ばかりに気を取られていた。それはまさしく、登場人物…続きを読む

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★★★ Excellent!!!

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第一話を読んだときはごく平凡な紛争政治劇ものかと思った。読み進めていくうち、それは間違いだと気づいた。
アメリカや中東だけでなく、平和を謳歌している国々の人々にもライトが当てられる。一見彼らは紛争に無関係に見える。
だが彼らも世界の一員であり、紛争の一端を握っているのだ。負い目を持っていない人間は何処にもいない。
その負い目の濃淡を描き出すことで、物語に立体的な膨らみが生まれている。
一話ごとに視点を変更する群像劇形式だが、ブラッドラインで死んだ有名ミュージシャン、Mを共通する話題としてストーリーは螺旋を刻む。
共通の話題で読者の興味を持続させる。上手い構成だ。
そして最終話。紛争の当事者たち、傍観者たち、全ての人間たちにまっすぐに重たいテーマを投げかける。作者はそこから逃げずに真っ向から勝負している。
Mの死は何かを変えたか。何か大事なことを変えたと言えるし、肝心なことは何も変えられなかったとも言える。
そしてそれは当然だ。たった一人で世界の全てなど変えられない。だが何か一つでも、誰かの心を響かせれば十分ではないか。
共鳴してくれる人が一人でもいれば十分ではないか。
「一粒の麦、もし死なずばただ一つにしてあらん。だがもし死なば、多くの美を結ぶべし」
見事な群像劇を描いた作者様に拍手を送りたい。次回作に期待しています。

★★★ Excellent!!!

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とにかく凄かったです。体震えてます。

WEB小説でアマチュア作家がヘタに群集劇に手を出すと、頭でっかちのごちゃごちゃになって破綻するのが関の山。しかしこの作品は、視点的な意味でも技術的な意味でも、そういった類のものとはレベルが違うなと感嘆しました。

ブラッドライン(血筋)という二重テーマの表題も好み。偶然の一致なのでしょうが、浜田省吾さんのアルバム「FATHER'S SON」に収録されている「BLOOD LINE (フェンスの向こうの星条旗 )」 という曲の匂いとメッセージ性をそこはかとなく感じました。

世界という名の群集劇。Mの取り扱いが果てしなく上手い。彼が最後に残した言葉は何か? 最後の一行まで読者を引っ張る力量が半端ないです。ここで問われる『世界』の意味を考えよう。そこには、読者である我々も含まれているのだと――。

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★★★ Excellent!!!

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 魯迅という中国人の作家がいます。

 今は知りませんが少なくとも僕の学生時代は国語の教科書に載っていたので、ご存知の方も多いでしょう。「阿Q正伝」や「狂人日記」の著者です。彼は元々、作家ではなく医者を目指していました。しかし1900年代初頭、彼は日露戦争に纏わる幻灯写真を見て目指す道を医学から文学へと変えました。この争いに満ちた世が真に必要としているのは病気や怪我の治療ではなく精神の改造である。そのためには文芸を用いて人々の心を変える他ない、と。

 僕はこの「ブラッドライン」という作品から、その魯迅が抱いていたものと同じ志を感じました。

 本作で描かれる「事件」や「戦争」がリアルであるかどうかは、僕の拙い知識では判別がつきません。しかし本作で描かれる「人間」が腹立たしいほどにリアルであることは、僕の拙い感性でも判断できます。繰り返される悲劇と終わりのない怨恨の連鎖。争いの止まない世界に翻弄される罪なき人々と罪を背負う人々。そうやって閉塞する世界に小さな風穴を開ける一人のスーパースターの死と、その死の真相が招く結末。それらは物語として綴られ、物語的装飾を受けながらも、物語とは思えないリアルな感触を以て読み手の心に楔を打ち込みます。作中における「M」の死がそうであったように、人々の胸中に静かなさざ波を立てて価値観を揺るがします。

 本作がテーマとしている「戦争」という事象は現代日本に生きる我々にとって縁遠く、しかし本作が訴えるメッセージは決して「他人事」ではありません。例えば、いじめ。例えば、マイノリティへの差別。そういった身近な事象に拡大適用出来る普遍性を供えています。誤まった道に進みそうな時、本作のことを思い出せば自分を律することが出来る。この作品はそれだけの強度を持っています。

 魯迅が死しておよそ80年、世界には未だ戦争が満ち溢れています。しかし魯迅の行為は…続きを読む

★★★ Excellent!!!

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最初このお話を読んだ時、何故か胸が痛くなり、三話で読むのを中断してしまいました。
今回、レビューを書くにあたって、もう一度、一話目から読み直しました。
その結果……、何とレビューを書いたものか、今も迷っています。
ただ、陳腐になってしまいますが、考えさせられる作品だ、と思いました。
幾つかの視点から物語の中心となる事柄を見つめ、真摯に向き合う、向き合わせる、そんな作品です。
ただ……争いは……。

★★★ Excellent!!!

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一人のスーパースターが紛争地帯の国境線で死亡したことから、誰が犯人だったのかを巡り、国際政治に影響を与えていく過程を記した作品になります。

国際政治が動くとなれば、影響を受けるのは地球の人々であり、本作品に登場する視点人物となります。

政治に直接関わる人間もいれば、武器製造に関わる人間もいて、かつて研究職を目指していたが夢破れて工員となった中年男性もいます。

他にも登場人物が複数登場するのですが、すべてをレビューで網羅してしまうと作品の面白さを損なってしまうので、視点人物たちの背景や思想に関しては自分の目で確かめてください。

視点人物たちは、誰かに少しずつ影響を受けて、かつ誰かに少しずつ影響を与えることで、塵も積もれば山となり、国家観を揺るがすほどの決定に繋がります。

しかし国家観を揺るがすほどの決定が下されてから、最後の最後でスーパースターの死の真相が描かれます。

おそらくですが、読者が持っている主張や思想によって、スーパースターが死亡した真相の受け入れ方が大きく変化します。

私の受け入れ方に関しては、秘密にさせてください。

みなさんも自分の目でスーパースターの死の真相を確かめるといいですよ。

★★★ Excellent!!!

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 平和を願い活動し続けた世界的歌手の死が、さまざまな人に与えた影響を与える社会派小説です。
 戦争をする国、テロリズム、介入すること、武器を売ること、無関心でいること。
 それぞれの立場を貫くのは、それぞれの「正義」や「信念」があるからです。
 わたし達が願う「平和」はどんなものか、どうすれば叶うのか、しっかりと考えないといけないと思い起こさせてくれる作品です。

 誰の考えに一番共感したでしょう。また、誰に一番不快感などのマイナス感情を抱いたでしょう。
 それらが一時的な感情でなく、これからの世界の課題なのではないかな、と思います。

★★★ Excellent!!!

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戦争は人間の生存競争である。だから人は争わずにはいられない。

本作は戦争を様々な視点から表現することで、軽口でない反戦を訴え、戦争、いや人間のエゴを暴きだそうとしている野心作である。

構成としては映画にしても良いぐらいの完成度で、最終話は考えさせられる作りになっている。

よくある戦争被害者に焦点を当てた感動作でも、ハリウッド系の正義を振りかざす痛快作でもないのが本作の魅力だ。

分量としてもストレスにならない長さなので、是非一読して見てはいかがでしょうか?

★★★ Excellent!!!

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演歌歌手のテープが聴けなくなり、対処できない無力な母親に胸うたれました。
夫・Mの内面に渦巻くものを感じとった元妻に哀れみを感じました。
ある作家の言葉を借りれば、山野さんにとって「骨身に沁みる言葉」で二人の造形が成されていたからかと思います。
何らかの体験と思考を通じないとあの母親や元妻は生まれ得ず、そうした人物を配した上で作品から、作者の「平和を希求する心」あるいは、「争いを憎む心」が伝わり、他のお作も拝見するつもりです。

★★★ Excellent!!!

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<憎しみの始まりを 君は知らない それなのに 渡されたそれを 君は次の人へと手渡していく>

名言ですね。

愛と憎しみ。どちらが人間を生かす力となるのか? 
考えさせられてしまいました。
愛だと思いたいところですが・・

他国や他民族への憎悪が、
国民のアイデンティティーになってしまうことが恐ろしいです。

この小説に書かれていることは、現実の世界で今起きていること、
起ころうとしていることです。
もちろん、日本も無関係ではありません。

無知と無関心は罪だと反省せずにはいられません。

力強いメッセージと作者様の祈りが伝わるような、
素晴らしい作品を読むことができて幸せです。
心に重く響きました。
まさに、ヘビーノベル。





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★★★ Excellent!!!

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とても面白かった。

Mというひとりの人間を中心に考えさせられる『平和』と『戦争』に関するお話。
考えさせられる内容が多く、心が痛むオチだった。
国によって考え方やストーリーが違うところも、分かりやすく表現されていて、とても読みやすい。ひとつひとつのお話にとても引き込まれ、どんどん読み進めてしまいました。

改めて『平和』と『戦争』について勉強になりました。もっと多くの方の目に留まり、評価されるべき小説だと思います。

★★★ Excellent!!!

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世界的スーパースターの『M』の死。

世界で報道される。たったひとりの男の死は…人々の心をどう動かすのか?

生命の重さ。テロ。まるで他人事のように見ていた。『ブラッドライン』を読んでとても考えさせられました。

色んな人に色んな視点で読んでもらいと思いました。


最後に紙(書籍)で読みたい。何度も繰り返し読みたい。きっと、次に読んだ時は違う思いで読み終われる作品だと思います。

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

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 それぞれの国、それぞれ個人の視点で、Mの死に対する意識や戦争への想いが、とてもリアルに描かれた作品です。

 上辺だけならば誰でも願うことができる世界平和。でもそれは本当の意味では世界平和ではない。世界とは何を指すのか。平和とは何を言うのか。その曖昧な概念で語られるぼんやりとした部分をも指摘した、衝撃的な物語だと感じました。
 話の中で登場するMの口遊む旋律が、リアルな描写の中で優しくも強力な印象を与え、人々に再考の機会を与えているようでした。
 この作品を通して、日常では抱かないような考えに触れることが出来るのではないでしょうか。最後までしっかりと読んでみてください。然すれば、これからの世界平和や、戦争に対して抱く概念すらも大きく変化するかもしれません。

 最終章のまとめ具合が圧巻です。Mの「最後の言葉」の真意に、鳥肌が立つほどでした。少ない文字数で、これだけの意味を込めた文章を書くことが出来る筆力に惚れ惚れです。

★★★ Excellent!!!

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とある世界的なミュージシャンの死を境に、世界中が一旦停止し、様々な推量や心理が錯綜します。
時を置いて明かされた真実に、再び動き出した世界は、どのような変化が生まれるのか……と、いろいろ思いながら次々に読めました。
仮にその世界に向き合った時、自分はどのように感じ、動いただろう、といろいろ考えさせられる。

★★★ Excellent!!!

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今まさに読むべき小説!
このレビューを書くわずか2日前(日本時間4/7午前)、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」59発を
シリア軍のシャイラット空軍基地や石油施設に発射したと世界中のニュースが伝えた。

リアルタイムに現在、世界が直面している危機を、この小説は予言していたかのようだと僕は思った。
是非、多くの方に読んで欲しい。そして様々な角度から世界を観て欲しいと思います!

著者の山野ねこ氏は「カクヨムヘビーノベル部」の発起人であり、部長。
「ヘビーノベル」というタグは今やカクヨム内でも人気のタグとなり、
この作品は、現在のライトノベルブームに一石を投じた「元祖ヘビーノベル」となっています。

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

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群像劇、特にアマチュアの作品にはあまり触れてきませんでした。どうしてもまとまりが悪く、主題がうまく表現されていないものが多くて。

そんなわけで、本作も映画「バベル」を観て影響を受けたんだろうかな、という印象で止まっていたのですが、私の好きなタイプの話を書いていた方が絶賛していたので、それではと思って読んでみました。

結果としては、実に良かったです。構成としては、数年前に亡くなったキングオブポップがモデルの人物であるMの死をめぐる複数の人の生き様が描写されるというものです。明確な道標があるため、あまり迷わずストーリーを追いかけられました。ファンや影響を与えた人、受けた人のそれぞれの思いが描かれ、住む場所や受けた教育の違いなどが表現されるという群像劇らしいストーリーでした。

しかしそうした導入や展開はあくまで技術上の話であり、この作品の本質はあくまで社会への問題提起です。なんといっても大多数の日本人はテロや戦争には無縁であり、今後もあまり深く関与することはないでしょう。そうした人間が社会問題への接点をもつきっかけはやはり情報媒体であり、次いでそれを基にしたフィクションです。

本作はそうした文章の意義をしっかり踏まえて問題の重さを読者は伝えようという意欲を感じました。ベトナム戦争の頃はこうしたテーマの作品が多かったようですが、それが現代に蘇った感じがしました。意見の相違を暴力で吸収しようとする悲劇を、改めて浮き彫りにした作品と思います。
特にブラッドライン周辺を生きる人々の思いが印象的で、その部分は2度読み返しました。

秀作です。特に若い世代の方に勧めたいですね。