第35話 帰る日

あっという間の帰省。

自宅に戻る日になってしまった…。

若い頃は、つまらないと思っていた故郷が…今は心に沁みる。

何よりの薬。


ちょっと気に入らないだけで、夫から「田舎に帰れ、田舎に帰っていいんだぞ(怒)」と散々背後霊のように言われ、本当に帰った事も一度ある。

あの時は、余程の事があった。


結婚し二人の子供に恵まれて、やがて凶変した夫。

最初母は、なかなか理解出来なかった。

東日本大震災があり、夫の指示で私の実家や遠く離れた島を転々とする日々。

夫は、何時間もかけて自分のクリニックと私の実家を行き来した。

そして時折「僕の顔、放射能焼けしてませんか?」と母に聞いていたようだ。

母は「ホンマに変わった人やったんやな…」と私に言った。


今では最大の理解者だ。

その母とも、しばらくお別れ。

会う度に小さくなる母。

耳が遠くなる父。

近いうちに、また帰ってこようと思う。

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