第29話 カウントダウン

朝からカウントダウンが始まった。

彼は、私や子供に何かをさせたい時、カウントダウンを始める。

朝起きない時、勉強を始めない時、お風呂に入らない時。。。

決まり文句は大きな声で

「あと十秒数えるぞ10·9·8·7·6·5·4....」

今朝は、起きない時に当てはまる。

10秒以内に行動しなければ、大変だ。

また通報されて警察や児相の一時保護は、もう勘弁。

このご時世、児相の面談は…かなり手強い。

優しい言葉で巧みに虐待していないか詰問される。

我が家の場合は、夫が児相の面談にも来ない為、私が一人で二人の担当者と面談する。

思い出すだけで気が重い。。。

カウントダウンからの日曜日、はじまりはじまり。

日曜日は、通報されないかいつもビクビクして過ごす。


次女は、夫に果敢に攻め込んで外泊許可ゲット。

数値が乱れて救急車で運ばれないよう、器具もつけた。

彼女の生き方を見ていると「今を生きる!」に徹している。

今を生きる…更には今を楽しむのみに徹している。

将来的にさらなる合併症の事を不安に思うからなのか、流石に大きな荒波を超えてきただけの娘だと、母ながらに少し感心してしまう。


そしてうちの子供達は、普通の家庭育ちの私から見れば打たれ強い。

勿論、父親の制裁や裏切りに涙することはある。

ただ、言葉の暴言に対しての精神力は、なかなかのものだ。


今回の外泊も、父親からかなりの凄まじい雷を落とされたが、怯むことなく立ち向かい外泊許可を得た。


この父親を持って不憫に思うけれど、客観的に見れば社会に出た時に、これに耐えてこれたのだから少々の事では凹まないだろう…とは思う。

事実、長女は今回の受験でいくつかの面談を受けたが、如何なる意地悪な問題も、人相の悪い面接官も何とも思わなかったと言っていた。


一点だけよく注意している事がある。

自分には普通に聞こえる事も、まわりの友達は傷つく言葉かもしれない。

自分が普通にかけた言葉は、相手を傷つける言葉かもしれない。

夫は、とにかく言葉が汚い。

先ず最初に「おいお前!」から始まる会話。

ストイックが当たり前の家庭で育つと、どうしても

相手にも厳しくなる。


今日、お友達の家に泊まりにいった次女は大丈夫だろうか?

普通のお友達の家に、一人だけで泊まりに行くのは初めてだ。

お父さんが、おいお前!と言わない事に気づくだろうか?

お父さんがお母さんの事を家政婦並みに手荒く扱い、罵声をあげない事をどう思うだろうか?

我が家が幸せだと言っても複雑、かといって他所の子になりたいと言われても寂しい。

明日が楽しみなだ。

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