第116話 義母の誕生日

義母のお誕生日、81歳。

義母は関西の裕福な家の次女として産まれ、自営業を営む両親と4人の子供達で仲良く暮らしていたと聞いている。

転機が訪れたのは、中学1年生の時。

両親が営む自営業が倒産した。

通っていたお嬢様学校を姉と共に退学し、転々とした後に東京銀座に住む伯父夫妻から「次女を預かる」との申し出があり、やがて義母は遠く離れた伯父の家に移り住んだ。

何故次女なのかは不明。

その時、実の父は「少し嫁に出すのが早くなった…そう思うようにしよう。」と他の子供達に告げたと、最近義母の姉から聞いたばかり。


やがて、義母は養父母の力で姉弟達の中で唯一大学まで出してもらい、途中高校生の時に正式に養女となり姓を変えたようだ。

伯父夫妻には子供がなく大切に育てられながら、養母は大変高貴な家の出で、義母と養母には仲良いながら何が超えられない壁があるように私は感じた。

常に「御母様」と呼び、敬語だった事を思い出す。

さて、その養父母が用意した婚約者…私の変態夫?の父親。つまり私の義父。

家柄だけで選ばれた義父は、男尊女卑の極み。

暴言どころか、時に暴力を振るい〜物を投げつけ、怪我をした妻は自分で縫う(一応医者)ような人。

それでも義母は、尽くした。


婚約中に義母は、スモン事件と呼ばれる「整腸剤 キムホルム」を服用しその副作用で下半身が麻痺した。

その後、リハビリで歩けるまでにはなったが、明らかにその歩き方は不自然なままだ。

それでも婚約を破棄しなかった義父に何か感謝のようなものがあるのかもしれない。

12ヶ月違いの男児2人を授かり、私の夫は年子の次男になる。


まあ…なんというか、まだまだ書き足りないことは山程あるのだが、義母もなかなかの彩り豊かな…人生のように思う。


これだけ見たら、何だか寄り添いたくなるようなそんな境遇であり、優しい義母なのだが…何故だか次男である我が夫に対しては凄まじく執着心がある。

それがきっかけで、一時期は長男である義兄が母親に絶縁を突き付けたくらいだ。

弟ばかり庇うな!!!と。


なので私と結婚してからの変態夫の様々な行い、DVセンターや警察や児相、はたまたパパ活三昧の日々も全て熟知でも、夫を叱ることはない。

パパ活三昧の時の話し合いに参加した時も「も〜本当に奥手なんだから♫ ほら、ご・め・んって言ってご覧」と諭していた…。

固まる私と娘達。

私や孫を責める事は流石にない。

ただ、絶対に我が夫である次男を庇うことは忘れない。


そうなると、私はやはり義母への優しい気持ちは消える。

夫にDVをされる度に、義実家への足は遠のき、連絡も億劫になり、やがて疎遠になる。

自分でも私って性格悪いな〜!と時折思う。

夫は夫、義母は義母。

それなのに、夫から嫌がらせがエスカレートする度に義母が嫌になる。。。

この変態夫の言動を見ては「はっ? どうしてこうなったわけ?」的な気持ちが出て、義母への気持ちが薄くなる。

あぁ、私って性格悪い。。。

義母には、一応…伝えてある。

「御子息の行動がひどすぎると優しくできません」と。

なんて嫁だ。。。


今年のお誕生日は、ハンカチと鍵をなくさないようにキークリップを送っておいた。

前に家に着きながら、鍵がカバンの中で見つからず大変だった事を思い出し…やはり気になる80代・車椅子の義母。


夫はと言えば…親&兄弟の誕生日も知らない。

伝えれば「うるさい! 興味ない!怒」と。

義母様、これが貴方の御子息ですぞ!と思うが…流石に言わない。

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