第5話 医学部か医学部でないか

朝から春のような、いや…もはや初夏のような陽気の中、足早に銀行に出掛けた。

上の子の大学入学金の振込期限が、迫っていたからだ。


現時点で唯一頂けた合格通知。

私には輝いて見えるが、夫にはまるで無かったかのように扱われてしまった。

理由は、彼の言葉を借りれば人間になれない学部…すなわち医学部でないからだ。

もっと言えば、国公立医学部ならば人間。

私立医学部なら準人間といったところだろうか。

今回合格を頂いた人間でも準人間でもない学部に、夫は憤慨し「認めない! 許さない! そんな道に進む奴とは関わりたくない! 縁を切る!」といった具合である。。。


彼は関東の産まれでだが、元々は九州が故郷で、御典医と呼ばれていた時代から医者の家系らしい。

しかし、だからといって医学部でなければいけない決まりはなく、結婚当時から子供が授かった場合は医学部とは言われていない。


大体、子供には子供の人権があり、人生全てが親の言いなりではない。

児童相談所の話でも再確認したが、そんなの当たり前の話だ。


上の子が希望の道に進めるかはわからない。 

ただ私は今日手続きを済ませ、新しい道を用意してきた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る