第55話 家を売る宣言

19時過ぎ、突然自宅電話が鳴った…夫のクリニックからの電話だ。

深呼吸をして出る。


おい(怒)その家売るから、キミも出ていくなりなんなり考えろ。

怒りというより、低く相手にととどめを刺す時の声。

胸がズキンズキンする…


昨夜、私の態度が悪かったから…そして子供が勉強しないから。


私も落ち着いて「はい」とだけ答える。

そしてDVセンターの方からの助言に従い、そっと録音する。


今朝は起きたらいなかった。

早めに仕事に行ったのかな?と思ったら、家出だった。


何度これを繰り返しただろう。

数日の時もあれば、10日の時もある。

今回は、自分の検診予定があるので数日か?


子供の七五三も、娘達が着付けをしている間に消えた。。。

理由は、パパくさ〜いと子供達に言われたから。

写真館で待ち合わせて、何時間待っただろう。。。

何組も先に撮影して頂いて、最後の組にしていただいても夫は来なかった。

母子3人の写真館での撮影。

最初から三人なら良かった。それならこんなにも娘も自分も傷つかなかったのに、、、と神社に車を走らせ何を祈ったか覚えていない。


そして、それから何年経っても…まだ続く低い声でとどめを刺して家出。

免疫を上げなくては。

家を売る…それもまた一つの選択かもしれない。

歳を重ねて、傷つきながらも少しそんな考えも出来るようになった。

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