2話 野菜のパン粥
2話 野菜のパン粥 1
※※※
ロンドは慌てて山道を下り、村の中を駆け抜ける。もう息も絶え絶えの状態で、足取りも覚束無い。だが決して止まろうとしない。一緒に仕事していた仲間や、知らせに来たケリーの旦那も、全て置いてけぼりにしている程に周りが見えていない。
目指すは村の広場のハンター組合支部だ。平屋の建物で、もう目と鼻の先の距離にまで来ていた。
そのままの勢いで、彼は扉を開け放ち、
「うちの娘がどうしたって!?」
と大声で叫ぶと、辺りを見渡して驚いた。
組合支部内は、騒がしい雰囲気が漂っているようだ。
多くの村の住人がいた。
主に村の爺婆やハンター仲間の妻達で、奥の飲食スペースの一角に集まって囁く様に会話している。
しかし離れていて、よく聞こえない。
その様子をハンター支部の従業員達は、入り口付近の受注カウンター越しから、遠巻きに眺めているのだった。
普段の施設内には訪れる人は疎らである。
時間帯や日にちに、よりけりだった。
大概は受注カウンターや、飲食スペースは混み合わない。
「な、なんだ?」
とロンドは異様な雰囲気を感じて、一瞬の間だけ戸惑い、立ち尽くす。
「あ、お父ちゃん!」
今度は人集りの方から、少女の呼ぶ声がした。
ロンドは視線を向ける。
すると人集りの間を縫う様に、サーラが移動してきた。腕には布を包んだ何かを抱えており、慌てた様子で駆け寄ってきては、
「お父ちゃん、大変!!」
と叫んでいた。
「あぁ、怖かったんだね!」
とロンドも返事し、両腕を広げながら屈むと、胸で受け止める体勢となった。
「うちの物置小屋に、赤ちゃんがいた!!」
だが続けてサーラは、再び叫んだ。
「へ?」
対してロンドは変な顔して驚いてしまう。訳が解らずに、何も言えなくなる。あまりにも予想外の内容だった。
ようやく彼の側まで、サーラは辿り着くと腕の中で布の中を、見える様に差し出した。
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