3話 蜂蜜の猪ステーキ 12

 そう言っている内に、親方がナイフとフォークを手にし、肉を切りわけだした。断面を見れば、僅かに薄くピンク色を残す程度で、よく焼いてあるのが解った。

 真っ先に親方が肉にかぶり付く。

 他のハンターも、続々と肉を口にすると、

 「おぉ!…なんじゃ、こりゃ!…いつもより肉が柔らかい感じがして、噛みきれるぞ。」

 「ほんとうだ。…確かにこれは旨い!」

 「…なんか塩味の中に、ほんのり甘い匂いと味もする。…これはこれで良いな。」

 「付け合わせの方も同じ味がするね。」

 「うちの娘の料理は美味しいなぁ!!」

 と、両目を見開かんばかりに驚きだしていた。さらに口に入れたのを飲み込むと、次々に皿に残っているステーキを手に取る。

 全員が我先にと、取り合いだしており、再び口へ運んでは咀嚼している。

 肉は歯切れよく簡単に千切れてしまい、単調な塩のみの味付けは、素材本来の旨味や脂身の甘さが口一杯に広がりを後押しする。

 また付け合わせの野菜達も、肉の脂でコクが足されていて、一層の美味しさを感じさせている。じゃがいもは皮がパリっと音が鳴り、ホクホクの身が崩れ、ねっとりした食感が口に纏わりつく。にんじんと玉ねぎも甘く、少し食感を残る程度の歯ごたえがあった。

 ハンター達は、料理を噛めば噛む程に幸せな気持ちに浸っていくのだった。

 瞬く間に料理は無くなってしまう。

 すぐに親方は、空の皿を突き返してきた。

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