7話 思い出のアップルパイ 24

 そうして、細やかな宴が始まったのだった。

 村人達は他の食べ物や料理を、次々と持ち寄り、飲めや歌えやと楽しげにしている。

 「楽しそうね。…兄さん。」

 「そうだな。…」

 と領主達は遠巻きに眺めながら、村人達から離れて端の方で佇んでいる。

 「おや、此方にいましたか。…領主様達も、近くにいらしてください。」

 しかし、不意に目の前の人混みから村長が此方へとやってきた。アップルパイの乗った皿を手にしており、差し出してくる。

 「いいんですか?」

 とエピカも聞きながら、おずおずと受け取っていた。

 村長は笑みを浮かべると、村人達の方へと促していく。

 領主達も、流されるままに移動していく。程なくしてリリャーの側に程近い場所で、椅子に腰を下ろす。

 二人は、同時にアップルパイに齧りついた。

 エピカは咀嚼する度に、頬が緩まり、美味しい味を堪能しているようだ。

 サーディンも笑顔になる。だが次第にハッとした表情となり、何かに気がつくと、独り言を呟きだす。

 「そうか、…彼等が家族だと言いきったのは、…。」

 「兄さん?」

 「こうして皆で旨い食事を共にしながら、他愛ない話をし、笑いあっては、楽しい時間を過ごす。…何気ない事でも、尊い事だ。…こんな時間を共にするから、絆が生まれるのだろう。…いかに私達が心配していると言っても、口先だけだったと思い知らされてしまうよ。」

 「っ!!………」

 「私達の家族は家庭に問題があったとはいえ、…こんな大事な事を、何時から忘れていたのだろうな。……」

 「そうね。…そうかもしれないわ。」とエピカは、静かな口調で同意している。

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