7話 思い出のアップルパイ 22
「あ、っ。…」
「リリャー、」
「…お腹すいた、みたい。…もっと、食べたいわ。」
「なら、良かったよ。」
それから彼女達は笑いあう。互いに瞳を涙で滲ませているようだった。
「「「よっしゃぁぁ!!」」」
と村人達も揃って、歓喜の声を挙げた。
老人達も、割れんばかりの拍手を贈っている。
領主達も、共に胸を撫で下ろしていた。
同時にリリャーは、何かに気がつくと、視線を前に向けた。
アニタも涙を拭いつつ、後ろを振り返る。
すると今度は、サーラが側までやってきた。胸の前で赤ん坊を抱えており、リリャーの目の前に差し出した。
「はい。…ママでちゅよ。」
「……えっと、…?」
とリリャーは訳が解らずに、困惑している。
しかし、サーラは、
「リリャーさん、アップルパイのおかわりはいりますか?」
「え?…えぇ、…お願いします。」
「なら、その間に、赤ちゃんを抱っこしてあげて。…あなた、一度も抱っこしてないもん。」
と言いながら促すと、赤ん坊をリリャーの膝の上に座らせてから、作業台の方に向かって行った。
リリャーが慌てて、空いている片腕で支えだす。さらに俯くと、赤ん坊が上目で顔を覗きこむ姿が見えていた。あまりの愛おしさに、力一杯に抱きしめていた。
「あう?」と赤ん坊は不思議そうに首を傾げる。
「……ごめんね。…ずっと待たせて、…心配かけるお母さんで、………でも、頑張るから。…これ食べたら、お母さん、貴女の為に頑張るから。」
と、リリャーは囁く様に呟いた。まるで自分に言い聞かせており、口にした言葉を心の中で固く決意しているようだ。さらには残りのアップルパイに齧り付き、味わうと満足気に微笑むのだった。
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