1話 芋餅 3
「お、おはよう。サーラちゃん。」
「おはよう。…お父ちゃん。…また一人で晩酌してたら、寝落ちしたでしょ。」
そう言われ、ロンドは罰が悪そうな表情で、頭を掻いており、
「…えっと、今は何時だ?」
「もう、朝じゃから。…朝御飯食べたら、ハンターの仕事に行かないと遅れるよ。」
「そうだった。…今日から、また山の害獣討伐に行くんだったな。…」
と会話をそこそこに打ちきり、椅子に座り直すと、一足先に食事に手をつけだす。
それをサーラは見届けると、踵を返して食卓の横を通り過ぎ、居間を後にしようとする。
「私、洗濯しているから…。」
「…ありがとね。…今日も美味しいよ。」
「そうじゃろう、…そうじゃろう。」
「ねぇ、サーラちゃん。…前から思ってたけど、たまに言葉使いが爺むさいよ。…」
しかし廊下に出る途中で、ロンドが呼び止めて指摘する。
対してサーラは呟きながら、首を傾げてしまう。
「そうかの?…なんかしっくり来るんじゃが~。」
「いやぁ、もっと年相応の話し方や仕草がいいと思うんだ。…やっぱり、おかしいよ。」
とロンドも意見を譲らない。
「年相応ねぇ、…」
サーラは腕組みして考え込む。ふと脳裏に、ある行動が過り、悪戯っぽい笑みを浮かべだした。さらに後ろを振り返りつつ、
「きゃはっ♥️」
と満面の笑顔を向けながら、小首を傾げた可愛らしいポーズをする。両手をグーにして揃ながら口元を隠し、片足を後ろに上げた仕草があざとい。自分でも楽しげになり、部屋を去る足取りも軽くなっていた。
「うちの娘が可愛いなぁ!!」
すると朝の早いうちから、ロンドのテンションが上がりきり、雄叫びが部屋中に響き渡った。
無駄な時間を費やし、仕事に出るのが遅くなるのだった。
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