1話 芋餅 4
※※※
それから暫くし、ーー
ようやくサーラは作業を終える。再び居間に戻ると食卓のテーブルに突っ伏して、一息ついたのだった。
主に洗濯や掃除にゴミ出しだ。
多岐に渡っていたが全く滞りなかった。もう慣れていたのである。
しかし、もう朝食には少し時間が過ぎていた。
さらに日は登り、朝と昼の間の頃合いだ。
「あぁ、腹が減ったの。…」
とサーラはぼやきつつ、徐にキッチンへ赴くと、鍋に残ったスープを、自分の皿によそっていた。
だが彼女は食卓を眺めると、
「…でも、あれだけじゃ腹持ちが少ないから、もう一工夫するか。」
と呟き、今度は全く違う調理に取り掛かっていく。
まずはじゃがいもを皮のついた状態で、再び沸騰した鍋に入れていく。
湯で上がったら芋の皮を剥いて、鉢と擂り粉木で、擂り潰す。
それを小麦粉と塩を混ぜながら、練って平べったく形成する。最後に表面に油を塗りたくり、今度は釜戸の火でこんがりと色がつくまで焼いていた。
やがて出来たのは、芋もちである。
残りのパンとカブのスープを付けて、それなりの量になる。
すぐにサーラは食前の祈りを済ませてから、口に運び、咀嚼していく。
芋もちは、外側がカリッとした歯ごたえがし、中身はしっとりでもちもちとする。
また味変にスープに浸して食べてみても、カブの甘さが溶けた汁が纏わり付いて美味しさが増した。
「相変わらず、美味しいのぉ。」
とサーラは呟きながら、不思議な感覚になる。芋もちは生まれて初めて作った。だが作り方から味までを完璧に覚えている。
因みに父が嗜めた爺むさい口調も、同じである。昔から違和感なく喋っていたとすら覚えていた。
彼女の頭の中では、やや疑問に感じた。しかし、今は深くは考えずに、お腹を満たす事を優先していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます