1話 芋餅  5

 そうして食卓の料理は食べきった。

 サーラは椅子に深く寄りかかりながら、腹を擦りつつ、一息ついた。

 同時に家の玄関をノックする音が聞こえており、

 「すいませ~ん。」

 と、続け様に誰かが呼び掛ける声もする。やけに聞き覚えがあった。

 サーラは気がつくと、急いで玄関へ向かい、扉を開けてみた。

 そこには、隣の家に住む御婦人がいた。名前はケリーである。恰幅のある体型の気の良いおばちゃんだ。

 「あ、おはようございます。ケリーさん。」とサーラは視線があった瞬間に、挨拶をする。

 「おはよう、サーラちゃん。」とケリーも返事をしている。しかし、やや狼狽えている様な仕草をしている。

 すぐにサーラは、問いかけた。

 「あれ、ケリーさん?…どうしたの?」

 「いやぁね。…サーラちゃんさ、……アンタの家の裏に物置小屋があるだろう。…昨日の夜になんかしたかい?…実は、…そこで、さっきから変な音が度々聞こえてんだよ。…」

 とケリーも、恐る恐ると答えていた。

 「ほへ?」

 サーラは話を聞くと、驚いて変な声をだしてしまう。

 その直後に、周囲に沈黙が漂う。

 サーラは我に返ると、慌てふためきながら、再び喋りだす。

 「…え?…何それ!?…あの扉の鍵が壊れてるやつ?…もう、ずっと使ってないけど。…」

 「…恐いだろう。…あたしも、そういうの苦手なんだよ。…うちの旦那にアンタの父ちゃんを呼び戻しに、広場のハンター組合の支部まで行ってもらっていて。…」

 とケリーも恐る恐る呟く。話が進むに比例して背中に寒気を感じて身震いしている。さらに何度も何度も、家の裏手に視線を送っているようだった。

 対してサーラは考え込むと、「なら、あたしが先に見てくるよ。うちになんかあったらヤダから、見てくるから!」と、颯爽と走り出してしまう。

 「え!?…駄目だよ、危ないから。」

 やや遅れて、ケリーの制止する声がした。さらに追いかけてくる足音もする。

 それでもサーラは、瞬く間に速度を上げて、遠退いてしまうのだった。

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