～前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚～

４話 野菜のポトフ １２

　ほぼ同時に、サーラが慌てて側まで寄り添ってきて、心配そうに声をかける。

　「どうしたの？…大丈夫？」

　「いやぁ、…ごめん。…とんでもなく自分が情けなく思えてしまって。」

　「……はい？」

　「……笑わないで聞いてくれるかい？」

　「う、うん。……」

　「あたし、…ハンターやっているけど、刃物が上手く使えないの。」

　するとアニタは座り込んだまま、少し俯きながらポツリポツリと独白を始めだした。顔はよく見えないが鼻を啜る音が聞こえており、涙を流しているのだと解った。

　「…いつも刃物を持つと、力の入れ方が変になって、こんな大惨事を引き起こすの。…自分でも故意にやろうとしてる訳じゃないのに。……そのせいで実を言うと、私がリリャーの代わりに、料理をしようとした時が何度かあるんだ。…けど、あの娘からは危なっかしいから止めてって言われて、何度か喧嘩もした事があるんだよ。」

　「……あぁ～、成る程。」

　とサーラは頭の中で、想像して理解する。

　「…後、リリャーが出ていく前に、私が仕事に出発する日にも同じ様な話で、喧嘩しちゃって、…」

　さらに尚もアニタは、話を続けようとしていた。

　「ねぇ、アニタさん。」

　「な、なんだい？」

　しかし話の途中でサーラは両手を伸ばし、アニタの顔に添えて、ゆっくりと正面に振り向かせると、

　「むぎゅ～～～～、じゃ！！」

　と言いながら、彼女の両頬を押して変な表情にしてきた。