3話 蜂蜜の猪ステーキ

3話 蜂蜜の猪ステーキ 1

 森で猪が討伐された同日。

 やや日が昇った午前中。ーー

 サーラは身支度を整えて、出掛ける準備をしていた。鏡の前で御髪や服の裾を整えると、おんぶ紐を身体に結んで赤子を背負っていた。

 「OK、イエィ!」

 と彼女は最後に、可愛い仕草のポーズーー右手をチョキにして人差し指と中指の間に右目を挟む様に添えて、左手を腰に当てる。ーーを取ったら、買い物籠を持って、踵を返して玄関へ向かうと戸締まりを済ませてから外を歩きだした。

 外では御婦人達も籠を片手に行き交う。

 サーラも続いて、村の中を直進していく。

 すると、近所の家の前を通り過ぎると、玄関口から村の住人達が声をかけてきた。

 「おや、サーラちゃん、昨日の赤ちゃんも。」

 「…おはようねぇ。」

 「あら、隣と裏のおばあちゃん達。…おはようございます。」

 とサーラも挨拶をする。

 そのまま彼女達は、会話しだした。

 「…何処に行くんだい?」

 「お買い物よ。…今日は村の広場に業者が来ている筈だから。」

 「そうだったね。…」

 「気をつけていっといでね。」

 「うん。行ってくるね!」

 そう言ってサーラは再び歩きだした。

 やがて目的の場所に辿り着く。

 そこは村の広場である。だだっ広い空き地で、たまに訪れる荷馬車等が停車するのに、使用される。

 既に中心部には複数の荷馬車がおり、周りにも人集りが出来ていた。

 ほぼほぼ村の御婦人達が取り囲む様に、集っているようだ。

 彼方此方で物の売り買いが行われている。

 ふと唐突に御者台の上から、髭を蓄えた中年の店主らしき人物が大声を張り上げて、客引きをしだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る