序章 遥か昔の記憶  4

 やがてマリーも話に聞きいっていた。

 そうして二人だけで話に熱中していき、

 「私ね、…甘い味が好きなの。…酸っぱいのは嫌い。…これなら食べれる。」

 「ホホホ、…今日のはとっても自信作でな。…なんなら、また今度にでも作ろうかいの。」

 「…本当?」

 「あぁ、約束じゃ。」

 「うん。」

 と、互いに笑顔を浮かべあいながら、密かな約束を交わらせていました。さらに二人は上機嫌となっていく。

 暫くして、全ての料理は残さず食べつくされた。

 お祝いの席は御開きとなる。

 参加した親子は手を繋ぎながら、キッチンを後にして自室に戻っていった。

 ラーサだけは一人で残っており、先にキッチンの後片付けを始めだした。思わず口からは、

 「んふふ。…次はどうしようかの。…皆は何を作れば喜ぶじゃろうか?」

 と独り言が漏れており、既に頭の中では料理のメニューを思案しては、皿を洗っている。軽快なリズムで鼻歌を歌い、皿の表面を指で音を奏でる様になぞる。

 全身からは、楽しさが滲み出ていたのだった。


 ※※※


 しかし、それから数週間の月日が経った頃である。

 王国【ランドロス】全土は、隣国の侵略を受け、激しい戦火に包まれる事となったのだった。

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