幕話1 山林の猪 2

 すぐに親方は立ち上がり、姿勢を正すと指示を飛ばす。

 「まちがいねぇ、…大きさからして件の害獣だ。…この近くにいる筈だから、全員で気合いいれて探しだせ!」

 それを聞いてハンター達も、緊張と手重い雰囲気が漂いだし、やる気に満ちた表情となる。すぐさま一斉に動きだして、また四方八方へと別れていく。

 「いたぞぉぉ!!」

 暫くした後に、遠く離れた藪の向こうから、仲間の叫び声が聞こえてきた。

 真っ先に親方は勢いよく駆け出していく。

 やや遅れて、ロンドも慌てて後に続いた。

 鬱蒼とする藪の中を掻き分けて、林の奥に進むと、目的の場所へと辿り着く。

 すると親方やロンドは両目を見開いて驚き、目の前の光景を凝視した。

 そこでは猪が暴れている。身の丈二メートルを越える大物で、大きな身体の振り乱し、近づく者を牽制していた。

 対してハンター達も武器を掲げて取り囲んでいるも、膠着状態を維持するので精一杯のようである。

 「あいつか。」

 と親方は呟き、探していた個体だと確信する。

 「よし。…なら、ここは私が!」

 とロンドも武器を手にして加勢に入った。だが一瞬の内に返り討ちに合い、仰向けで地面に倒されていた。

 再び猪は攻撃を仕掛けてきて、牙を突き立てて迫ってきた。

 ほぼ同時に親方が間へ割り込み、携えた槍で受け止める。

 「あわわ!?」

 「ほら、ロンドさん!…腰抜かしてないで、此方に来い!」

 と仲間達の幾人かに連れられ、ロンドが後ろへ捌けていく。

 その間に親方と猪は力比べをしている。

 互いに押しては返すの攻防を繰り広げていた。

 次第に親方は、思いっきり舌打ちしていた。結果的に動けなくなり、攻めあぐねる状態へと陥ってしまう。

 周囲の仲間達にも、不安と焦りの空気が漂いだしていた。

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