4話 野菜のポトフ 10

 すぐにアニタも後を追いかけていき、「あ、あたしも何か手伝うよ。」と隣に並び立つと、恐る恐る申し出てきた。

 「…あたしは、お湯を沸かす間に、野菜切っといて。」

 「あ、あぁ。」

 「そこの水場に、今日使うやつを置いてあるから。」

 とサーラは釜戸の中に薪をくべながら、指で指し示する。

 その先へとアニタは視線を向ければ、水場には、まな板や包丁がある。すぐ側にも、にんじん、じゃがいも、が置かれているのが見えた。

 すると「固いのから切ってね!!」と、再びサーラの指示が聞こえてくる。

 アニタは表情を少し強張らせていた。しかし、すぐに意を決してカボチャを掴むと、包丁を縦にして、ゆっくりと突き立てる。

 ガン!!ガッシャーン!!

 しかし、彼女の手元が狂って、刃先は上手に刺さる事はなかった。代わりにカボチャが有らぬ方に弾き飛ばされ、他の野菜や周りの調理道具を巻き込みながら、大きな音を立てて床に落ちてしまう。

 「…なんじゃ!?…どうしたんじゃい!!?」

 「………。」

 「……え?」

 「………。」

 ほぼ同時に二人の視線が下を向き、転がるカボチャを見つめながら、揃って沈黙していた。

 しばらくして、アニタは、「ごめん。」と小さく呟く声が微かに聞こえていたのだった。

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