姉妹・青い女


 私は大学生、すぐ下の妹が高校生、その下の妹は中学生。

 もうひとり、すでにお嫁に行っている姉がいて、女ばかりの4姉妹です。

 現在は、お嫁に行った姉に赤ちゃんが産まれて何かと大変なので、母が手伝いに行っています。

 父は東京に単身赴任していて、私は妹たちと田舎の古い家で暮らしています。



 妹ふたりは部活で遅くなる事が多く、家に帰る順は私が一番早いです。

 次が中学生の四女。

「ただいまー」

 と、玄関から四女の声が聞こえました。

「おかえりー」

 私が答えると、四女が居間を覗き込んで、

「お姉ちゃん、いまの人、友だち?」

 と、言います。

「友だち?」

「いま、女の人が家から出て来て、裏山の方に行ったよ」

 来客などありません。

「知らないよ。うちから出て来たの?」

「うん。スカイブルーのスーツみたいの着てた」

 最近の中学生には、スカイブルーなんて表現が流行っているのかしら。

「なんかのメーターの点検とかの人じゃない?」

「あー、そっかぁ」

 四女とそんな話をしてから一時間ほどして、高校生の三女も帰って来ました。

 帰って来るなり、玄関の戸締りをしながら、

二子にこ姉ちゃん、いま青い服の女の人が家から出てったんだけど」

 と、言いました。

三子さんこも見たの? さっき四子よんこも、帰って来た時そんなこと言ってたよ」

「マジで? ヤバかったよ、その人」

 そう言って、網戸にしていた玄関横の窓も閉めて鍵をかけています。

「三子姉ちゃんも見たの? スカイブルーの女の人」

 と、四女の四子も顔を出しました。

「スカイブルー? まあ、服はそんな色だったけど」

「なにがヤバかったの」

「うちから出て来たから、こんにちはって挨拶したの。でも無視して出て行くから、悪質な訪問販売とか、派手なほうが逆に怪しまれない系の泥棒かと思って。うちにご用だったんですかって、声かけたらさ」

 などと言うので、私は、

「あんた度胸あるわね」

 と、突っ込みを入れました。

「うん。でもその青い人、くるって振り返ったら、目が真っ青だった。外人さんの青い目じゃなくて、白目も黒目もわかんない感じで、眼球全体がターコイズブルーだった」

「服がスカイブルーで、目はターコイズブルー? おつむの中はマリンブルーかな」

 という私の冗談を聞き流して、三子は、

「四子はどこで見たの」

 と、四子に聞いています。

「私も、うちから出て来るの見た。裏山の方に歩いてった」

「うちから出てったの? 私もうちから出て行くのを見たんだよ。戻って来てんじゃん」

 私たちは顔を見合わせました。

「ちょっと、戸締りしてこよう」

「私、塩撒く」

 のんびりしている四子を居間に残し、私と三子は家中の戸締りをしました。

 その日は、何事もなかったのですけどね。



 隣の家まで距離があるような田舎の家です。

 妹たちの事も心配だったので、すぐに防犯カメラを設置しました。

 私の大学がIT関係な事もあり、ド田舎の旧家でも問題なく。

 あまり大仰な物でなく、スマホで映像確認ができる小型のカメラを数台。玄関や裏庭などを映せるように置いてみました。

 そして、不可解な様子が映ったんです。


 青いスーツの女が、閉じている玄関扉をすり抜けて現れるんです。

 そのまま門を出て裏山の方角へ歩いて行くのですが、20分ほど経ってからまた玄関扉をすり抜けて現れたんです。

 入って来る様子は映っていません。

 玄関扉をすり抜けて現れ、裏山の方向へ曲がって行く。そんな事を夕方の内に4回繰り返しました。

 テレビにつないで妹たちにも見せると、ポカンとしていました。

 でも、妹たちが見たのはその女だったそうです。

 肝の座った三子も、こんなのはどうしようもないと言っていました。


 昼間や夜には、青い女の姿は映っていません。

 夕方だけ、玄関から裏山の方向へ歩いて行くのを4回繰り返し、そんな事が4日間続いて、ピタッと姿は見えなくなりました。

 両親に映像を見せても、よく出来ていると笑うばかりです。

 妹たちは何度か遭遇しましたが、私は外へ出ていてみても出会う事がありませんでした。

 けっきょく青い女が何者だったのか、わからず仕舞いです。

 もやもやしますね。

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