バケツ


 学校の帰り道に、夕日が眩しすぎる道があります。

 下校時刻は大体いつも同じなので、この時期は同じ眩しすぎるタイミングで帰る事になります。


 いつものように夕日から顔を背けて歩いていると、横道に赤いランドセルの女の子を見かけました。

 道端にしゃがみ込んで、青いバケツを覗き込んでいます。

 なんとなく気になって足を止めました。

 バケツに生き物でも入っているのか、女の子は動くものを目で追っている様子です。

 にやりと笑っているような顔で、女の子はバケツに片手を伸ばしました。

 そしてパッと何かを掴み、パクっと口に入れてしまいました。

 目にも止まらぬ速さというやつで。

 女の子は口をもぐもぐさせながら立ち上がり、向こうをむいて歩き去りました。

 水音がしたような気はしましたが、水が跳ねている様子はありません。

 ただ、バケツが置いてある家の子ではなさそうでした。


 バケツの中に何がいたのか、まだ残っているのか……。

 見に行く勇気はありませんでした。


 真っ赤に染まる夕日の中、不気味な光景でした。

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