クレーンゲーム
四十代前半のCさんのお話です。
息子さんが学校へ行っている間に、地元のお友だちと息抜きに出かけたそうです。
もっとオバサンになる前にプリクラを撮ろうという話になって、久々にゲームセンターへ。
平日の昼間だったこともあり、ゲームセンターの中は人も少なかったそうです。
『まだプリクラあるんだね~』から『めっちゃ進化してる~』なんて話題で盛り上がったとのこと。
昔は、クレーンゲームのキャラクターグッズを狙って、あちこちのゲームセンターに通ったこともあったとか。
お友だちと一緒に懐かしい気持ちで眺めていると、奥まった位置のクレーンゲームに目がいったそうです。
近付いてみると、丸々として大きなヒヨコのぬいぐるみでした。
並べられたヒヨコのぬいぐるみたちが、一斉にCさんの方に向きを変えたそうです。
中に追尾センサーが入っているのだろうと興味を持ち、Cさんは1回挑戦してみることに。
お友だちは、
「えー、それぇ? ぜったい取れないってぇ」
と、言っていたそうですが、
「そうねぇ。でも1回だけ」
と、言いつつ、100円玉を入れました。
思う所にアームは止まらなかったものの、上手い具合にヒヨコのバランスが崩れ、なんと1回でゲットしたのだそうです。
ラッキー! と、思いながら、ハンドバッグから飛び出すほど大きなヒヨコを持ち帰ったそうです。
でも、学校から帰ってきた小学1年生の息子さんに見せると、ギャン泣きされてしまったのだそう。
追尾センサーが動いて恐かったのかと思い、Cさんの寝室に置いておいたそうです。
そして、お務めから帰った旦那さんにも見せると、驚きながら爆笑されたとのこと。
なにより驚いたのはCさん自身だったそうです。
置いてあったのは、人間大のゾンビの首だったんです。
「夫にね。時期的にわかるけど、うちの子にはまだ早いよって苦笑いされたわ」
と、Cさんは言っていました。
「いつからゾンビの首に?」
私が聞いてみると、
「よく考えたらクレーンゲーム、ハロウィンコーナーに囲まれてたのよ。入れ替わったとかじゃなくて、私にはあれがヒヨコのぬいぐるみに見えてたの。まぁ、育児疲れだよねぇ」
って、軽い世間話のように聞かせてくれました。
そして、不気味だからと言って、そのゾンビの首を私にプレゼントしてくれました。
屋外にも置けるような硬い素材でできていますが、どう見ても追尾センサーのようなものはありませんでした。
Cさんには、適度に息抜きしてほしいと思いました。
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