姉妹・別れ


 私は大学生、すぐ下の妹が高校生、末の妹は中学生。

 もうひとり、お嫁に行った姉がいて、女ばかりの4姉妹です。

 現在は姉に赤ちゃんが産まれて、なにかと大変なので母が手伝いに行っています。

 父は東京に単身赴任していて、私は妹たちと田舎の古い家で暮らしています。



「お母さん、来週には戻って来るって。私も、もう戻るから」

 夕飯後の食器洗いをしながら、テーブルで宿題を始める三子さんこ四子よんこに言いました。

 ふたりとも手を止めて、私の後姿に目を向けたのがわかりました。

「なんで。やだ」

 と、三子が言います。

「四子、スマホなくても平気だよ」

 と、四子もすぐに言いました。

「ずっと居れば良いじゃん」

「そういう訳にはいかないよ。お母さんが、あんたたちの事お願いって言うから来たんだし」

 濡れた手を布巾で拭い、私が振り返ると、四子が目を潤ませていました。

一子いちこ姉ちゃんも、居なくなっちゃったのに……」

「すぐ会いに行けるじゃないの」

 私はポケットからスマホを取り出し、

「はい、四子。私のスマホ、お下がりであんたが使ってくれてて嬉しかった」

 と、四子にスマホを手渡しました。

「……うん」

 私が隣の和室へ行くと、ふたりもついて来てくれました。

 ふたりで手をつなぎ、私を見詰めています。

 私は、仏壇に手を合わせ、ロウソクに火を灯しました。

 お線香を1本立てながら、

「あ。肝心な事、忘れてた。私の写真、スマホのホーム画面にしてる写真に替えておいて。免許証の写真は勘弁してよ」

 と、ふたりに言いました。

 四子がスマホを操作し、三子も覗き込んでいます。

「ずっと前、うちらと撮った写真?」

「うん。じゃあね」

「あっ」

 ふたりが顔を上げた時、私は仏壇の前から消えているのです。

「……」

「うわあぁんっ」

 三子はぽろぽろと涙をこぼし、四子は声を上げて泣き出してしまいました。


 元々、両親が妹たちのそばにいない間だけという約束だったのです。

 仕方ありません。

 三子が、すぐにスマホの写真をプリンターで印刷し、私の遺影を替えてくれました。


 母がこっちに帰って来たら、今度は私が姉と赤ちゃんを見守りに行こうと思っています。

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