もぐらみみず


 ひと月ほど前から、庭でモグラが土山を作るようになりました。

 モグラ塚というそうですが、モグラが巣作りで掘った土を地上に出してできるものだそうです。

 ボコッと出っ張った土山を踏みならすのも面倒で、モグラ除けを考えなくてはいけないと思っていました。


 早朝に庭で水やりをしていると、通路に突然、ボコボコとモグラ塚が現れました。

 まだ土山が動いているので、モグラが出て来るのかと思い、遠目に眺めていました。

 モグラ塚はいくつも見てきましたが、実物のモグラは見た事がありません。

 モグラ除けを調べている時に見た写真では、黒くて寸胴ずんどうな体に短く大きな手足がついたネズミの親戚のような姿でした。

 でも、黒いネズミは現れませんでした。


 うごめく土山の中に見えたのは、ツヤのあるピンク色でした。

 土の中から野球ボールよりも大きなピンクの半球が見えたと思ったら、筒状にニョキッと伸びあがりました。

 男性の腕より太い、特大ミミズが顔を出したように見えました。

 それはクネクネと動きながら、すぐに土の中へ引っ込んで行きました。

 その場には、いつも通りのモグラ塚が残されていました。

 実物のモグラを見た事がなくても、それがモグラではなかったという事ははっきりわかります。

 凹凸もなくツルリとした、キレイなベビーピンクの動くもの。

 ……早朝だったので、寝ぼけていたのかも知れません。



 その日の昼間、インターネットで注文していた、モグラ忌避きひ用品が届きました。

 微量な電気を流すことでモグラ忌避効果を得られる、土に刺して使うタイプのものです。

 ちょっと迷いましたが、使ってみました。

 それ以来、庭にモグラ塚ができる事は無くなりました。効き目があったようです。

 暴れ出したらどうしようかとドキドキでした。

 我が家の下に何が居たのか、どこへ行ったのか。

 今は、あまり考えたくありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る