おいで
ワンちゃんも、意外と表情豊かなのです。
嬉しそうだったり不機嫌だったり。
空腹を主張するようにこちらを見ていたり、何かな何かなと、わくわくしているような表情を向けてくることも。
我が家の2匹のワンコたちもそうです。
大型犬のラリアと小型犬のリア。
とても仲良く、良い子な2匹ですが、最近、不思議な行動をするようになりました。
先日、私は部屋でパソコン作業をしていました。
カシカシカシッと軽い爪音をたてて、小型犬のリアが私の部屋まで駆けて来ました。
部屋の前でお座りし、尻尾をぴょこぴょこ振っています。
ワンコたちが遊び回れるよう、部屋のドアは開けっぱなしです。
廊下にトコトコトコっと、もう少し重みのある足音をさせながら、大型犬のラリアもやって来ました。
先に来ていたリアの頭をクンクンしてから、その横にお座りしました。
2匹とも、私をじっと見つめています。
わくわくしているような表情ですが、まだご飯の時間でも散歩の時間でもありません。
毎日のサイクルは、把握しているワンコたちです。
「どうしたの?」
と、聞いてみましたが、ワンコたちも『どうしたの?』という表情をしているように見えました。
玄関に掛けている散歩紐やボールが落ちて、散歩の時間と勘違いしたのでしょうか。
すぐ見に行き、ワンコたちもついて来ましたが、何も落ちていません。
どうしたのかな、とは思いつつ、
「ご飯、まだだよ」
と、声をかけ、私は部屋に戻りました。
ワンコたちも、別の部屋で一緒に遊び始めていました。
数時間して、また2匹が私の部屋に駆けて来ました。
そろそろご飯という時間でしたが、それをアピールしに来るのも珍しいです。
いつもなら私がご飯の支度を始めると、食器の場所で待機しています。
お腹が空くのがいつもより早かったのかと思い、その時はすぐにご飯をあげました。
準備をしていると、2匹はいつも通りに食器の場所で待っていました。
でも、その数時間後にはまた、私がパソコン作業をしている部屋へ揃ってやってきました。
一緒に寝ているとき以外は、数時間おきに2匹が揃って駆けて来るようになりました。
私の部屋に来る遊びを覚えたというより、呼ばれて来ているように見えます。
もちろん、私は呼んでいないのですけど。
ワンコたちが、呼ばれたかのように私の部屋へ来るようになって3日目。
一度だけトイレを失敗して、しゅんとした表情でアピールしてきましたが、それ以外は数時間おきに、2匹揃って私の部屋の前に駆けて来ました。
楽しげな表情から不思議そうな表情に変わり、首でも傾げるように去って行きます。
今日は、そろそろ来るかなという時間に、耳を澄ませてみました。
隙間風や家鳴りで、ワンコたちが反応しているのかも知れません。
口笛などで呼んだことはありませんが、呼ばれたように聞こえる音がしているのだと思ったのです。
ですが、聞こえたのは音ではありませんでした。
『おいで』
確かに、聞こえたのです。ドアの向こうから小さい声で。
ワンコたちが駆けて来ます。
2匹は部屋の前でお座りし、私に視線を向けてきます。
合点がいきました。
ワンコたちは、その声に呼ばれていたのです。
「私は呼んでないよ」
ワンコたちへの言葉を、声のした辺りに伝えるつもりで言ってみました。
2匹は不思議そうな顔をしています。
ですがそれ以来、用もなくワンコたちが私の部屋に駆けて来ることはなくなりました。
見えない存在の声にギョッとするところかも知れませんが、なんとなく、自分の声だったように聞こえたのです。
在宅ワークでパソコンに向かい続ける私の、ワンコと遊びたい気持ちが生霊のように飛び出し、2匹をを呼んでいたのかも知れません。
勝手な解釈ですが、なんとなくシックリくるのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます