うずくまる
これは、ちょっと悲しいお話かもしれません。
民家と民家の間で、一軒分の土地が雑草まみれになっている空き地を見たことありませんか。
Sさんという男性に聞いた話です。
ご実家の近所に一か所、そういう空き地があるそうです。
新しく分譲住宅でもできれば、すぐに人が住み始めるような地域なんだそうですけどね。
その空き地だけは、もう何年も空き地のままなんだそうです。
土地の売り手がつかないのか、土地の確保はされていても建築が始まっていない状態なのか。
その空き地は、Sさんの通勤途中にあるんです。
季節によっては、雑草まみれになりますよね。
その雑草の空き地に、いつも小さい子がいるそうです。
雑草の中に、しゃがみ込んで。
うつむいているので、顔は見たことないそうです。
でも、いつも見かける女の子。
近所の子ども? ツクシやヨモギ取り? 虫取り?
そんなはずありません。
通勤途中、いつも見かける女の子は毎日、同じ服なのだそうです。
真夏の炎天下でも、真冬の霜柱の中でも、Tシャツ1枚にスパッツのようなのを履いて。顔を上げることなく、土をいじるような仕草をしているのだそう。
今は雑草に埋もれるように、うずくまっているのが見えるそうです。
ただSさんが知っているのは、その空き地は以前、一軒家が火事で全焼し、子どもがひとり亡くなっているという事実。
『あの女の子を迎えに来てくれる人は、どこにも居ないのだろうか?』
Sさんは残念そうに、そう言っていました。
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