ロングスカート


 いつもお洒落な、Sさんに聞かせてもらった話です。



 Sさんは翌日にロングスカートを履こうと思い、クローゼットから出してクリップ付きのスカートハンガーに掛けておいたそうです。

 クローゼットの中がぎゅうぎゅう詰めだと、皺になりやすいですから。


 しばらくして、スカートの皺が伸びていると思ったら、なんだか膨らんでいたそうです。

 スカートの裾の下に、体育座りをしている両足とお尻が見えました。

 どう見ても小学校あがるかどうかくらいの小さい子だったようですが、Sさんは高校生の弟さんだと思ったそうです。

 他に考えられませんから。

 高校生にもなって、弟が姉のスカートの中に潜り込んでいる。

 そりゃあSさんは、

「キモっ! なにやってんのっ」

 と、声を上げますよね。

 でも、何も答えないそうです。

 Sさんがもう一度、

「ちょっと、早く出て来なさいよ」

 と、声をかけると、それはスカートの中でゆっくり立ち上がったそうです。

 その辺りで、やっと気付いたんですよね。小さい子だって。

 ロングスカートの中で立ち上がった子どもは、そのまま踵を返して向こう側へ行ってしまったそうです。

 クローゼットの取っ手が出っ張っていて、その部分にハンガーを掛けていたので、向こう側って言うのはクローゼットの中なんです。

 もちろんクローゼットは閉じられていたんですけどね。

 恐る恐る開けてみても、もちろん子どもは居ません。

 ぎゅうぎゅう詰めの服を全部出して見ても、やっぱり子どもの姿はなかったそうです。



 Sさんは、えんじ色のロングスカートを撫でながら、

「このスカート、量販店で売り出しだったからさ。同じの履いてる人も見た事あるんだよね。お母さんが同じスカート履いてて、間違えてついて来ちゃった男の子の霊が迷子になってたりしたのかな」

 と、まさにその時に履いていたスカートの話を聞かせてくれたんです。

 以前にも、Sさんがそのスカートを履いていたのを覚えています。

 その話を聞かせてくれた時、以前よりもずいぶん膨らんで見えたのが気になりました。

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