天気予報


 初めは、ギャグかと思ったんです。


 テレビの天気予報で、台風の接近を伝えていました。

 気象予報士のお姉さんが、天気図を使って台風の特徴を説明しています。

 『強い台風』とは言っているものの、ひとつ前に接近した台風は『猛烈な台風』と言われていたので、前回ほどではないのかなと安心しながら聞いていました。

 でも、天気図を見て驚きました。

 天気図上の台風があるはずの部分が、どう見ても不気味な目玉なんです。

 コミカルなイラストなどではなく、充血した様子までリアルな目玉でした。

 何かを探すように、ギョロギョロと動いています。

 『台風の目』に掛けた冗談にしても、気持ちが悪いです。

 生放送なのだから、すぐに『不適切な画像が流れて申し訳ありません』という一言があるのかと思っても、一向にその様子はなく。

 ネットで調べても、そんな話題は引っ掛かりません。

 テレビであれだけ不気味な目玉が映されたら、すぐに炎上しそうなものですが、時間が経っても、天気予報の目玉の話題はどこにも見当たりませんでした。

 インターネットに繋がっているテレビなので、サイバー攻撃によるイタズラなども勘ぐってしまいましたが、そうではなかったようです。


 数日後、例の台風が当地を直撃しました。

 安全な屋内から、ガラス窓越しに空を見上げています。

 台風と思われる濃灰色の雲の中心に、巨大な目玉がありました。

 忘れかけていた、天気予報の目玉を思い出しました。

 その目玉は、私ではなくどこか一点を見下ろしているようです。

 雲の形が人の顔や動物に見える事はありますが、その目玉は、雲を使って目玉そのものを表現しているように見えます。

 それほど雨風が強いとは言われていませんでしたが、何かとんでもない被害が出るのではないかと心配になりました。

 慌ててカーテンを閉め、カーテンのない窓には養生テープを貼っておきましたが、台風は無事に通り過ぎてくれました。

 翌日の天気予報を見ても不気味な目玉は見当たらず、大きな被害の映像も流れません。

 私の見た目玉は、いったい何だったのでしょう。


 片目だけですが、とても恨めしそうに見えました。

 台風に現れた目玉の持ち主が、見下ろされている誰かを呪ってでもいるように感じたんです。

 それを見てしまった私にまで、呪いが降りかからない事を願うばかりです。

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