窓辺の花

 これは怖いというか、不思議な話なんですけどね。


 私の家の隣は一人暮らしのご老人が住んでいたんですが、最近、空き家になったんです。

 体調不良で入院されて、そのまま病院で亡くなったんです。隣の家で亡くなったわけではなくてね。

 娘さんが来て、しばらく片付けとかしていたんです。

 それで、隣の家は不動産屋に頼んで、売るとか貸すとかにするってことは聞いていたんですね。

 ちょっと工事が入ったりもして、中はキレイになっていました。


 うちのベランダから、お隣の家の窓がすぐ近くに見えるんですよ。

 以前はカーテンが引かれてたんですが、今では古いカーテンも取っ払ってしまって、何も無い部屋の中が見えるようになってるんです。

 別に中の様子をうかがってるわけじゃありませんが、ふと目がいくと、窓際に白い花瓶が置かれていたんですよ。

 細身のシンプルな一輪挿しに、薄いピンクのバラの花が1本、飾られていました。

 不動産屋さんが、内装の写真を撮るために飾ったのかなと思ったんです。

 でも、次に気が付いた時は、細いヒマワリに変わってたんです。その時は夏で。

 秋口にはコスモスになって、その次は小菊になって、梅の花枝だった時もありました。

 ちょっと、おかしいんですよね。

 玄関前には枯れ葉が吹きだまったままだし、娘さんはもちろん、不動産屋さんが来ている様子もなかったんです。まぁ、気付かない内に来ていたのかも知れませんけどね。

 ただ、亡くなられたご老人はお花が好きで、お庭でも色んな季節の花を育ててたなっていうのを思い出すんです。


 最近、パステルカラーのスイートピーから、真っ赤なガーベラに変わりました。

 キレイに咲いていますよ。萎れているのは見た事が無いんです。

 一体、誰が花を替えているのでしょう。不思議です。

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