冷蔵庫


 襖の開け方が悪いと別の部屋に繋がってしまうとか、何かの弾みでドアを開けたら別世界だったなんて言う話が昔からありますよね。

 それが、冷蔵庫の扉で起きたんです。


 とても暑い日です。

 キッチンは温室のような高温になっていました。

 冷蔵庫から麦茶を取って、早くエアコンの効いた自分の部屋に戻ろうと思っていたんです。

 ちょっと乱暴な開け方になっていたのかも知れません。

 冷蔵庫の扉を開けると、その中に仏壇がありました。

 祖母の部屋にある仏壇です。

 祖父の遺影いえい位牌いはいが置かれていて、母が買って来た仏花が飾られています。

 半分ほどに短くなった線香が1本、立てられていました。線香の香りも感じます。

 慌てて、冷蔵庫を閉めました。

 軽く咳払いし、もう一度ゆっくりと冷蔵庫を開けました。

 タッパーだらけの、ちょっと何かのニオイがするいつもの冷蔵庫でした。

 片手に持ったままのグラスに冷えた麦茶を入れながら、ふと壁掛けカレンダーに目がいきました。

 そう言えば、お盆です。

 祖母の部屋へ行き、自分もお線香に火をつけて手を合わせました。

 すでに祖母が立てた線香が、半分ほどに短くなって煙を上げていました。

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