第6話

「あ、あれー、なんかビミョー…」


「とんでもありませんっ!」


 白石和真の落胆振りに、ユミルは思わず声を張り上げた。


「私はこれでも、永い年月をかけて鍛練を積んできました。騎士団でも上位の実力者だと自負しています。それが鍛練もせずにこんな数値など、見たこともありません」


「え…あー、そーなの?」


 ユミルの熱弁に気を良くしたのか、白石和真の表情がみるみると赤らんでいく。


「ちなみに、そのスキルと言うのは?」


 そのとき黒板を注視していた詰襟少年が、疑問を口にしながら指を差した。


「ああ、これはこうするとですね…」


 そう言ってミサが、スキル名称の文字を指先でポンとタップした。するとプルダウンウインドウが開いて、中に説明文が表示される。


『チユノココロエ(治癒術強化)』


「何だよ治癒って、チートじゃねーのかよー」


「とんでもありませんっっ!」


 白石和真の発言に、ユミルが再び声を張り上げた。


「治癒属性はとても貴重なんです。発現したなら引く手数多で、一生生活に困りません。それがその上強化だなんて、こんなの見たことも聞いたこともありませんっっ」


「あ…そーなの? ならコレもチートなのかー…でもなー、ちょっと違うんだよなー。これじゃないんだよなー」


 それでも納得出来ない白石和真は、ひとりでブツブツと呟いている。そんな彼を横目に、続いて少女が勢いよく右手を挙げた。


「次、ウチー!」


   ~~~


 ナルカミヒカリ

 タイリョク:400

 マリョク :1000

 チカラ  :200

 スバヤサ :300

 ユニークスキル:ライゲキ


「えー、コレってどーなのー?」


 鳴神なるかみひかりが、よく分からないと言った顔で周りを見回した。


「何か全体的に、カズっぺより弱い気がするんだけどー?」


「いえ、これは…凄いです」


 ユミルが震える声で黒板を凝視する。


「確かに尖った能力ですが、この魔力なら充分なお釣りがきます……そして、極めつけはこれです」


 そう言ってユミルは、スキル名称を指差した。


「雷撃…言わずと知れた上位属性です」


「上位属性ー?」


 鳴神ひかりが不思議顔で小首を傾げる。


「はい、攻撃魔法には8つの属性がありまして…」


 攻撃系魔法には「火」「木」「土」「水」「風」「雷」「光」「闇」の8つの属性があり、上位属性である「雷」は、更に上位である神属性の「光」「闇」以外の全てに有利属性となる。


「えー…つまり、スゴいってことー?」


「そうです、凄いんですっ!」


 いまいちピンと来ない鳴神ひかりを尻目に、ユミルがひとりで興奮した。


「クッソー、そっちのがチートっぽくて正直羨ましいぜ」


 白石和真が頭の後ろで両手を組みながら、羨ましそうに口を尖らせる。


「あー、カズっぺのその顔見たら、やっぱりスゴいんだって実感出来たー」


 そう言って鳴神ひかりは、嬉しそうに可愛く微笑んだ。


「しかも『カズっぺ』で定着かよー」


 白石和真はそう言いながら、しかし満更でもないようにほんのりと頬を赤らめた。

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