第7話

「さて、お次はどなたが行きますか?」


 ミサが残りのメンバーをクルリと見回す。


 神木公平は少し思案したあと、チラリと佐敷瞳子へと視線を向けた。しかし佐敷瞳子は、先程掴んだ袖口を離さないまま、やや俯き加減で動かない。


 その様子を伺っていた詰襟少年は、前を向いてタンと一歩進み出た。


「なら、俺が」


「はい、どうぞ」


 ミサが進路を譲るように半歩退いて、詰襟少年を誘導する。


 詰襟少年は水晶玉の前に立つと、一度クイッと眼鏡を中指で持ち上げた。


「不思議と、雰囲気あるな」


 白石和真がゴクリと喉を鳴らす。


「だねー、なんか期待しちゃう」


 鳴神ひかりも同じように、詰襟少年の背中に熱い視線を注いだ。


 そうして詰襟少年が水晶玉に触れた瞬間、黒板から眩い光が溢れ出た。


 後ろで見守っていた全員が、思わず目を閉じる。


 サキモリユート

 タイリョク:1200(800)

 マリョク :600(400)

 チカラ  :900(600)

 スバヤサ :600(400)

 ユニークスキル:ユウシャ

 パーティスキル:ヒカリノカゴ


「ゆ、勇者…キタ」


 白石和真が、ただ呆然と呟いた。


   ~~~


「何なのだ、この数値は…」


 ユミルが咲森勇人さきもりゆうとのステータスに只々絶句する。


「ふむ…」


 咲森勇人は右手を黒板に伸ばすと、人差し指でスキル名称をポンとタップした。


『ユウシャ(ステータス50%増)』


「なるほど、それでこの表示か」


 ひとり冷静に、自分のステータスを確認していく。


「なら、コレは…」


『ヒカリノカゴ(闇特効ステータス3倍)』


「おいおい何だよ、そのパーティースキルって?」


 自分に無かったその能力に、白石和真は驚きを隠しきれない。


「ふむ…」


 咲森勇人は両腕を組むと、チラリとユミルの方を確認した。


「わ…分かりません。見たことも聞いたこともありません……そもそもあなたの能力自体が、規格外すぎます。これが、召喚者の力…」


 ユミルは半分泣きそうな瞳で、ジッと咲森勇人を見つめていた。


「あ、ちょっと待ってください。確か次元の女神から預かった『トリセツ』なる物がここに…」


 ミサが慌ててポケットをまさぐる。


「取説だってー、ウケるー」


 鳴神ひかりが口元に手を当て「キャハハ」と声をたてて笑った。


「あ、ありました……どうやら召喚者どうしなら、お互い合意の上でひとつのパーティーを組めるようです。その際、経験値や魔法効果など有利に働くメリットがあって、このスキルもその恩恵のひとつのようです」


「だ、そうだ」


 咲森勇人が軽く微笑みながら、白石和真の方に顔を向けた。


「クッソー、これが勇者の力か…羨ましすぎるぜ」


「なんでー? どうせ皆んなでパーティー組むんだから、ユーたん居てくれたら怖い物なしだよー」


 鳴神ひかりが「キャハ」と笑う。


「まー確かに、パーティーが前提ならバランス良さげだけどよー…」


(ひかりちゃんの事は、オレが自分で護りたいんだよ…)


 白石和真がボソリと呟いた。


「えーカズっぺ、何か言ったー?」


「な…何でもねーよっ!」


 そう言って白石和真は、真っ赤に上気した顔をサッと伏せた。

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