第31話
「何…これ」
佐敷瞳子が見つけた、まるで「クナイ」のような形状の魔法道具には、明らかに他とは違う異質なステッカー表示がされていた。
先程リーラから説明を受けた魔力の消費量の欄が、数字ではなく「最大魔力の20%」となっている。
「ああ、それアルか」
気付いたリーラが、前髪をかき上げながら小さな溜め息を吐く。
「発売当初は、とても画期的な商品だったネ」
スキルとしての魔法の発動とは違い、魔核による強引な魔法の発動には、どうしても多量の魔力が必要になる。それ故に一般的な術式の物でも使えて3回か4回、構造が複雑になると1回や2回が限度になってくる。
そこで利用者のニーズに応えて開発されたのが、この無属性魔核を組み込んだ「風の刃」である。なんと魔力が少なくても、5回の発動が可能となっているのだ。
喜び勇んだ騎士団員や傭兵たちが、次々とこぞって購入した。しかし残念ながら、直ぐに欠点が浮き彫りになってしまう。
威力が消費した魔力依存となっているため、少ない魔力では攻撃力が低すぎて全く使い物にならなかったのだ。
「返品に次ぐ返品…今や製造中止の幻の逸品ネ」
「威力が、魔力依存…」
リーラのその説明に、佐敷瞳子は思わずゴクリと息を飲んだ。
「…んで、そんなレアな魔法道具、何でリーラが持ってんだ?」
いつのまにか丸イスに座って胡座をかいていたメイが、不思議そうな顔を向ける。
「捨て値でいいから買い取ってくれと、数日前に持ち込まれたアル。どうやら祖父の遺品を整理していた時に、倉庫から出てきたみたいネ」
「何だよそれ、よっぽど嫌われてんなー」
リーラの
「公平くん、これ…」
佐敷瞳子が両手の手のひらに乗せて持ってきたクナイ形の魔法道具を、神木公平もジッと見る。
さっきの説明を聞く限り、攻撃力はとても期待出来そうにない。しかしながら、自分が使える物がコレしかないのもまた事実…
そのとき神木公平は、ハタと気が付いた。
佐敷瞳子が勧めてくるのだから、コレにも何かあるのではないか…と。
考えてみると、リーラが入手した経路も何とも曖昧で、いかにもラノベらしい。何処かで有名な付与術士が、何らかの能力を付与していたとしても何もおかしくはない。
神木公平は、佐敷瞳子の手からそっとクナイを受け取ると、一度大きく頷いた。
「そうだな、瞳子がそう言うなら」
「う、うん」
佐敷瞳子も照れ臭そうに、頬を染めて小さく頷く。
「それじゃ次は、瞳子のを探そうぜ」
佐敷瞳子の頭を軽くポンと叩いて、神木公平は優しい笑みを一杯に浮かべた。
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