第32話
「瞳子は魔力が多めだから、正統派なヤツでいいと思うんだ」
神木公平は壁に掛けられている杖を、ひょいと持ち上げた。ラクロスのスティックのような、半面カップの底に赤い魔核が組み込まれた、50センチメートル程の杖である。
「
少し興奮気味なのか、神木公平の口調が徐々に強くなっていく。
「でも、スキルの魔法…じゃないから、『やっちゃいました?』は…出来ないと思う」
「あー、それもそうだなー」
佐敷瞳子の困ったような笑顔を見て、神木公平もその事実に気が付いた。
これは魔法道具なのだから、誰が使っても威力は変わらないと云う事に…
杖を元の位置に戻して、二人は並んで店内を巡り始める。この他愛のない時間が、佐敷瞳子にとって掛け替えのない時間となった。
そんな幸せな時間の中、佐敷瞳子の瞳に珍しい形の魔法道具が飛び込んできた。青色の魔核を中心に、「く」の字状に握り手と発射口のある、鉄砲のような形をしている。
手に取ってみると、佐敷瞳子の小さな手にも妙にシックリとくるサイズ感だ。
「素人ってのは、本当に面白いネ」
そのとき、座っているメイの横に腕を組んで立っていたリーラが、興味深そうな声をあげた。
「普通なら素通りするような物にも、興味本位で関心を持つアル」
「えっと、どういう事ですか?」
神木公平の疑問に答えるためか、リーラがツカツカと歩み寄ってくる。それからジェスチャーで渡すように促され、佐敷瞳子は魔法道具を差し出した。
「コイツは水の泡を撃ち出すだけの、ただの子どもの玩具アル」
「へっ⁉︎」
あまりの驚きに、神木公平の目がまん丸になる。
どうやら水鉄砲とかシャボン玉とか、そういう類いの物らしい。さっきは見落としていたが、必要魔力の表示も「20」になっていた。
「ただし、何処かのヤンチャ坊主の仕業で、コイツにはユニークな
「
「そうアル」
リーラは神木公平に向かって頷くと、更に解説を進めていく。
どうやら銃身とも言える発射管が、独自のカートリッジと付け替えられているらしい。
そのカートリッジには、水魔法の高い親和性を利用した工夫が施されており、投擲武器にもよく利用される「破裂の実」の粉末が装填されている。これにより撃ち出される水泡に破裂の属性が付与され、接触と同時に爆発する仕組みになっているのだ。
そのうえ、施された改良はもうひとつ…
本来、握りにあるレバーを引くと一発の水泡が撃ち出される。しかし改良によってレバーを引いている間は、魔力はどんどんと消費されるが、連射が可能となっているのだ。
「ホント何処のバカかは知らないアルが、ただの玩具をよくここまで武器として昇華させたネ」
そう言って佐敷瞳子に「
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