第50話
少女の名は「チェルシー」と言った。
傭兵組合に所属している新米傭兵だが、とある事がキッカケで、貴族の御曹子の元で数日行動を共にしていたらしい。
本日この森へは、御曹子とお付きの2人を含めた4人組で来ていたのだが、不幸にも途中ではぐれてしまったようだ。
ただ、そのはぐれた経緯については、少女は多くは語らなかった。
その後チェルシーは、腰に差していた小刀で日輪熊の胸の毛皮を丁寧に剥ぎ取る。しかし持参のカバンを紛失していた事に気が付いて、目に見えてオロオロし始めた。
不憫に感じた佐敷瞳子がこっそりスキルで探してみたが、範囲外なのか何なのか、残念ながら何の反応も示さなかった。
仕方がないのでその毛皮も、神木公平たちのリュックで一旦預かる事にする。
そうして神木公平たち3人は、泉に停めてある馬車の所まで一緒に戻ることにした。
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「やっと戻ったか、チェルシー。心配したぞ」
3人が泉の場所まで戻った途端、馬車の横に立っていた長身の男性が、笑顔で安堵の声を漏らした。
金髪のオールバックに、凛々しく吊り上がった切れ長の目。如何にも高級そうな銀の
「はぐれたらこの場所に戻るように言っておいた筈なのに、姿が見えないから探しに戻るところだったんだぞ」
「入れ違いにならなくて良かったですわね、ハルベルト様」
そのとき男の両脇を固めている女性のひとりが、その左腕を取りながら顔を見上げて微笑んだ。
黒のウェーブがかった長髪に、健康的な褐色の肌が目に眩しい。全身を白の外套で覆っているが、前開きの隙間から見えるアレは、まさかの赤いビキニアーマーではないだろうか。
両腕には肘まである赤い籠手を着け、両足には膝下まである赤いロングブーツを履いている。
「あの子も一人前の傭兵ですから、ちゃんと一人で戻ってくると言いましたでしょう?」
するともう一人の女性も、ハルベルトの右腕を取りながら、甘ったるい声で微笑みかける。
ワンレングスの茶髪に輝くような色白の肌。両肩と前掛けが桃色になっている純白のドレスアーマーに身を包み、同じく純白のブーツを履いていた。
「そうだな、ロート、ハイス。賢い君たちの言う通りだった」
そう言ってハルベルトは、ビキニアーマーのロートとドレスアーマーのハイスの肩を抱き寄せる。
一体何を見せられているのだろうか……
男として少し羨ましい気もするが、それでもああはなりたくないと、神木公平は心に誓った。
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